シェアハウスにおける「スルガ銀行問題」が何なのかお調べですね。
連日ニュースやテレビ番組で取り上げられた大きな問題であり、詳しい内容がわからないとシェアハウス経営が不安になる気持ちはわかります。
しかし、ネットのニュース記事を読んでもわかりづらく、シェアハウス経営で何に注意したらいいのかわかりません。
本記事では、問題の全容や注意点がわかるように、以下3点を紹介しています。
- シェアハウスのスルガ銀行問題
- かぼちゃの馬車のビジネスモデル
- 安心してシェアハウス経営をするための注意点
この記事を読めば、シェアハウスのスルガ銀行問題の全容や背景を理解でき、シェアハウス経営で何を注意したらいいのか確認できます。
ぜひ、参考にしてください。
1. シェアハウスのスルガ銀行問題は何が起きた?
シェアハウスのスルガ銀行問題とは、人気シェアハウス「かぼちゃの馬車」運営元の破綻に伴い明るみになった、スルガ銀行の悪質な不正融資のことです。
自転車操業をしていたかぼちゃの馬車は、スルガ銀行からの融資がなくなることで破綻をします。
売りにしていた高利回りの家賃保証がストップし、シェアハウスオーナーの多くが困惑。
破綻寸前となり、被害者の会を発足します。
同時にスルガ銀行の数々の不正融資が暴かれ、金融業界やシェアハウス業界に激震が走りました。
この問題によって、利益重視の金融機関のあり方やシェアハウス経営の大きなリスクが一気に表面化します。
かぼちゃの馬車運営元の悪質なビジネスモデルの発覚と破綻、スルガ銀行の経営を揺がす大問題に発展した、シェアハウスのスルガ銀行問題。
ここでは、その全容について解説していきます。
1−1. 2018年4月スマートデイズ破産手続きにより不正融資問題が明るみに
2018年4月に女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」の運営元であるスマートデイズは破産手続きを行います。
理由は、スルガ銀行の融資がなくなり資金難に陥ったためです。
スルガ銀行は、スマートデイズで融資していた唯一の金融機関で、その融資額は1,000億円を超えていました。
スマートデイズは、その融資をもとに自転車操業を行っていましたが、スルガ銀行の融資方針の変更によって資金調達が困難になり、約6億円の債務超過に陥ったのです。
そして、スマートデイズの破綻をきっかけに、スルガ銀行の不正融資が明るみになっていきます。
後に判明することですが、スルガ銀行がスマートデイズに融資をした1,000億円超の大半は不正融資によるものでした。
スルガ銀行は過剰なノルマによって目先の利益を重視するあまり、個人向け不動産融資で数々の不正を行っていたのです。
多くの不正融資が明るみになることで、業界全体に激震が走ります。
1−2.スルガ銀行の不正融資は1兆円規模
2018年8月21日、スルガ銀行の不正問題に関する驚くべき報道がされます。
第三者委員会の調査によって、多くのアパート・マンション融資で資料改ざんが見つかり、その不正融資の規模は1兆円に上るというものです。
改ざん内容は、審査に出す契約書の金額を意図的に高くするものでした。
改ざんをしたのは、スルガ銀行内に「融資額の上限は物件価格の90%」というルールがあったためです。
本来、1億円の物件への融資上限は9,000万円で、オーナーは1,000万円を自己資金で準備する必要があります。
しかし、自己資金の捻出が難しいオーナーもいるため、契約書の物件価格を1億2,000万円にするなどして、1億円の融資を受けられるようにするのです。
自己資金なしのフルローンで購入でき、高利回りの保証も付いているため、かぼちゃの馬車の物件は驚くべきスピードで広がっていきました。
スルガ銀行の不正融資が1兆円規模になるという報道後、ニュースでも大々的に取り上げられるようになります。
1−3. 預金残高の水増しや契約書の偽造が発覚
スルガ銀行の不正融資は物件価格の改ざんだけでなく、預金残高の水増しや契約書の偽造もあることが発覚をしました。
具体的な不正内容は次の3点になります。
- 預金残高の改ざん
- 入居率の改ざん
- 年収の改ざん
審査を通過させるために年収や入居率を実際より高く設定したり、預金残高を1桁〜2桁増やす行為です。
驚くべきことに、70万円しかない預金残高が2,000万円以上に改ざんされていたオーナーもいました。
当時のスルガ銀行ではこのような不正行為が蔓延しており、取引先から見ても、あたりまえのように不正行為が行われていたそうです。
1−4. 2018年9月創業家が辞任
2018年9月に、当時のスルガ銀行トップの会長岡野光喜氏、さらには社長ら取締役5人が問題の責任を取り辞任することになります。
第三者委員会の調査報告で、数々の不正行為が行われた原因はガバナンスの欠如と過大なノルマと判断されており、金融庁も経営陣の監督責任を重く見ていたためです。
また、連日の報道で、経営陣に対する世論の風当たりも非常に強いものがあったため、会長や社長らの辞任は不回避でした。
岡野氏はスルガ銀行創業家出身で、30年以上もトップに君臨してきたこともあり、創業家の辞任は各メディアでも大々的に取り上げられます。
しかし、経営陣が引責辞任をしても問題が収まることはありませんでした。
1−5. 2018年10月金融庁から業務停止命令が下る
2018年10月に、スルガ銀行は金融庁から半年間の業務停止命令を受けることになります。
業務停止命令の行政処分を受けた理由は以下の7つです。
- 改ざんがあることを知りながらも融資を続けたこと
- 融資の際にカードローンや保険など顧客の利益にならないものをセット販売していたこと
- シェアハウス向けの融資承認率99%など審査部が正常に機能していなかったこと
- 実態を把握したり適切な審査を行わずにファミリー企業に融資をしていたこと
- 反社会的勢力とわかっていても取引をしていたこと
- 金融庁に虚偽の報告をしていたこと
- 過大なノルマに加え叱責などのプレッシャーをかけていたこと
これにより、スルガ銀行は2018年10月から2019年4月まで半年間の業務停止になりました。
半年間もの業務停止命令が下されることは珍しく、この行政処分を見ても、いかに大きな問題かがわかります。
1−6. 971億円の大幅赤字へ転落。不正融資の対策で元本一部カット
2019年5月、スルガ銀行は971億円もの赤字決算を発表しました。
前期から1,000億円以上の利益が減っており、預金残高は1兆円近く減少しています。
また、赤字決算と同時に、利用者への救済措置として元本を一部カットすることも発表をしました。
元本一部カットは、裁判所や民間ADR機関など第三者の判断を経て行い、ローン契約者の返済額を減らすものです。
このように、900億円以上もの赤字決算と同時に、初めて不正融資被害者への対策が発表されました。
2. スルガ銀行問題でかぼちゃの馬車を運営するスマートデイズが破綻
飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長をしていたスマートデイズですが、スルガ銀行の融資規制をきっかけに、資金繰りが悪化して破綻してしまいます。
そして、かぼちゃの馬車の悪質なビジネスモデルが世に広まることになり、多くの人に衝撃を与えました。
ここでは、スマートデイズやかぼちゃの馬車の詳細、破綻までの経緯について見ていきましょう。
2−1. スマートデイズは女性専用シェアハウスを運営
スマートデイズは、2012年8月に設立、東京銀座に本社を構えて女性専用シェアハウスの「かぼちゃの馬車」を運営する会社です。
かぼちゃの馬車は独自制度の、
- 30年間定額家賃保証
- 8%確定利回り
などが特徴です。
4年弱という短い間で足立区だけで120棟、都内で800棟もの物件を販売するなど、シェアハウス業界で急成長を果たします。
売上高は2013年7月期に4億円だったのが2017年3月期には300億円まで拡大するなど、設立以来、急成長を遂げていました。
2−2. スマートデイズが破綻した経緯
ここでは、スマートデイズが破綻した経緯について見ていきましょう。
なぜ破綻したのか、重要なポイントを時系列で紹介していますので、破綻理由や流れが掴むことができます。
以下は、ここで紹介する6つの経緯です。
- オーナーに家賃保証の減額を通知
- 減額理由はスルガ銀行の融資がストップしたため
- 2018年1月以降は家賃支払が完全に止まる
- 2018年4月民事再生法を申請
- 2018年5月破産手続き開始決定を受ける
- 多くのオーナーが借金を返せなくなり破綻
それでは、1つずつ経緯を解説していきます。
これまで急成長してきたスマートデイズは、スルガ銀行の融資規制によって借り入れができなくなり、1年も満たない間に、家賃保証減額、打ち切り、破綻と状況が激変しています。
多くのオーナーが借金を返せなくなり破綻
多くのオーナーは、家賃保証が0円となったことから、ローン返済のあてがなくなっています。
たとえば、金利4.5%、返済期間30年で1億円のローンを利用していれば、毎月の返済額は50万円です。
とてもじゃありませんが、普通の仕事で返せる金額ではありません。
幸いにもスルガ銀行は返済を猶予していますし、その間はブラックリストに載らずに済みます。
しかし、猶予が終われば返済しなくてはいけませんが、大半のオーナーは返済できず、破綻するしか道はありません。
オーナーに家賃保証の減額を通知
2017年10月に、オーナーに対して、突然家賃の減額通知があります。
8%利回りなど高額な家賃保証が魅力だったこともあり、ほとんどのオーナーが減額通知に驚きを隠せませんでした。
また、憤りを感じたオーナーも多かったため、スマートデイズに対してたくさんの抗議が行われます。
減額理由はスルガ銀行の融資がストップしたため
後に判明することですが、スマートデイズが家賃保証の減額をしたのは、スルガ銀行の融資がストップしたことが理由でした。
なぜなら、かぼちゃの馬車に融資していた金融機関はスルガ銀行しかなかったからです。
唯一融資をしていたスルガ銀行の方針が変わったことで、スマートデイズは資金調達ができなくなり、家賃保証を維持できなくなります。
2018年2月以降は家賃支払が完全に止まる
2017年10月から減額していた家賃保証は、2018年2月に完全に止まります。
スルガ銀行の融資がストップした後、これまで以上の自転車操業で家賃保証を続けていたスマートデイズですが、遂に資金不足に陥ったためです。
オーナーはほとんどが1億円〜3億円程度のローンを利用しているため、途方に暮れることになります。
2018年4月民事再生法を申請
2018年4月9日に、スマートデイズは民事再生法を申請します。
資金繰りが悪化し、債務超過に陥ったためです。
しかし、この民事再生の申し立ては再生計画作成の目処が立たないなどを理由に棄却されることになります。
2018年5月破産手続き開始決定を受ける
2018年5月15日に、スマートデイズは正式に破産手続きの開始決定を受けました。
家賃保証が減額されてわずか7ヶ月後のスピード破産であり、この時の負債総額は60億3,523万円にも上ります。
2−3. かぼちゃの馬車のビジネスモデル
ここでは、かぼちゃの馬車のビジネスモデルについて紹介します。
急成長を遂げていったかぼちゃの馬車ですが、物件を高く販売して、得た資金を家賃保証に充てる自転車操業が前提のビジネスモデルでした。
そのような実態を表に出すことなく、聞こえの良い高利回りの家賃保証をアピールし、契約を重ねていったのです。
かぼちゃの馬車の悪質なビジネスモデルや手口について、見ていきましょう。
買主には実際の家賃よりも高いサブリース契約をアピール
かぼちゃの馬車は、実際の家賃よりも高いサブリース契約をアピールして販売を拡大させていきました。
※サブリースとは…不動産会社がオーナーから物件を一括で借り上げ、入居者に転貸する管理方法。入居者は不動産会社に家賃を支払い、不動産会社はオーナーに相場の8割前後の家賃保証を支払う。オーナーは空室になっても家賃保証が入ってくるのがメリット。
アピールした主な内容は「30年間定額家賃保証」と「8%確定利回り」の2つになります。
実際の家賃収入より家賃保証の方が利回りが高い上、保証期間が30年間あるため、ほとんどのオーナーがお得だと感じ、かぼちゃの馬車を契約をしていったのです。。
実態は高値で販売して家賃保証に充てる自転車操業
かぼちゃの馬車の高利回りの家賃保証は、自転車操業によって実現されているものでした。
スマートデイズの下請けが建築した物件を、相場より高く販売し、建築会社から50%のキックバック(紹介料)を受け取り、家賃保証の原資にしていたのです。
公表されているビジネスモデルは、職業斡旋や他サービスの収益を原資にするものでしたが、実態はまったく違うものでした。
スマートデイズが約束通りの家賃保証を維持するには、物件を販売し続けなくてはいけません。
かぼちゃの馬車は、物件を売って得た利益を家賃保証に充てる、自転車操業だったのです。
瑕疵担保責任も回避
かぼちゃの馬車は、瑕疵担保責任を回避する仕組みもとっていました。
下請けの建築会社を元請け契約にすることで、瑕疵が発覚しても直接的な責任が及ばないようにしています。
かぼちゃの馬車は、建築基準法スレスレで建築されていたことが業界内では有名です。
しかし、今後何らかの瑕疵が見つかってもスマートデイズに責任を問うことが難しくなっています。
3. スルガ銀行が行った2つの対応
スルガ銀行は、シェアハウスへの融資を規制するだけでなく、オーナーへの条件付き借金帳消し案を検討しています。
特に、後者の救済措置が実現するかどうかは、オーナーにとって重要な問題です。
ここでは、それぞれの対応内容を見ていきましょう。
対応1. シェアハウスへの融資規制
スルガ銀行がとった対応の1つが、シェアハウスへの融資を規制したことです。
これにより、かぼちゃの馬車は家賃保証を減額、ストップすることになります。
この融資規制がきっかけとなり、スマートデイズが破綻し、スルガ銀行の不正融資が明るみになりました。
そして、多くの被害者が出ることになります。
対応2. 物件譲渡で借金帳消しを検討
2019年11月、スルガ銀行が条件付きで、借金の帳消しを検討していることがわかりました。
まだ、検討段階ではありますが、正式に決まればオーナーにとって、非常に大きな救済措置となります。
尚、物件譲渡が条件になると報道されています。
4. 安心してシェアハウス経営をするために注意すること
ここでは、安心してシェアハウス経営をするために注意することを紹介しています。
注意点を知っていると、家賃保証の減額で困ったり、営業マンに怪しい物件を掴まされるのを回避することが可能です。
以下は、シェアハウス経営で注意すること4つです。
- サブリースは減額や打ち切りの可能性がある
- 建築会社や不動産会社は信頼できるところか
- 本当に採算がとれるか
- 頭金なしで購入できると誘われていないか
それぞれの内容について、確認していきましょう。
注意点1. サブリースは減額や打ち切りの可能性がある
サブリースは減額や打ち切りの可能性もあるため、注意しましょう。
「20年家賃保証」などに魅力を感じて契約をしても、空室率の増加や運営元の経営が傾けば、減額や打ち切りの可能性があります。
実際に、サブリースの減額や打ち切りが原因でトラブルになっているケースは多く、国交省や消費者庁が注意喚起を出しているほとです。
サブリースの家賃保証は減額や打ち切りの可能性があることを理解し、資金計画や収益計画をシミュレーションしておくことが大切になります。
また、このようなリスクがあるからこそ、信頼できるサブリース会社を選ぶことが重要です。
サブリースは減額や打ち切りの可能性があることも、念頭に置いておきましょう。
注意点2. 建築会社や不動産会社は信頼できるところか
建築会社や不動産会社は信頼できるところか確認するようにしましょう。
信頼できない業者を選ぶと、手抜き工事をされたり、悪質なシェアハウス物件を掴まされることになるためです。
悪質な建築会社が工事をすれば、断熱材を抜く、留め付けをしないなど、さまざまな手抜き工事をする可能性があります。
また、スマートデイズのように、実態とは異なる説明をして売りつけてくるかもしれません。
信頼できる業者を選ぶためにも、実績や歴史、評判を必ず確認するようにしてください。
安心してシェアハウス経営をするためにも、信頼できる業者かどうか調べることは大事です。
注意点3. 本当に採算がとれるか
シェアハウス経営を始める前に、採算がとれるのか何度もシミュレーションを行いましょう。
具体的なシミュレーションができていないと、わずかな環境変化で資金難に陥るためです。
「10年〜20年後も安心です」「入居率が7〜8割程度でも採算がとれます」など、営業担当者の言うことを鵜呑みにしていると損をしてしまいます。
周辺築古物件の家賃や入居率、老朽化状況、リフォームや修繕費用、エリアの人口増減などを調査し、本当に採算がとれる物件なのか確認するようにしましょう。
想定家賃や入居率を低く設定するなど、厳しめの条件でシミュレーションをするぐらいがちょうど良いです。
本当に採算がとれるのかシミュレーションをした上で、シェアハウス経営を始めるようにしてください。
注意点4. 頭金なしで購入できると誘われていないか
頭金なしで購入できると誘われている場合は注意しましょう。
一般的に、不動産投資は物件価格の1割〜3割の頭金が必要であり、業者が何としても売りたいがために頭金0円にしている可能性があります。
数千万円〜数億円する高額な物件を、頭金なしで売るのはよほどのことです。
しかし、昨今、スルガ銀行のシェアハウス問題やTATERU問題で、金融機関の審査基準は大変厳しくなっています。
そのため、よほど収益性の高い物件でない限り、フルローンで審査が通る可能性は非常に低いです。
頭金0円で買えると誘われるシェアハウスは、業者がなんとしてでも売りたいと考えている物件なため、検討しないようにしましょう。
まとめ
今回は、シェアハウスのスルガ銀行問題やかぼちゃの馬車のビジネスモデルなどについて紹介いたしました。
スルガ銀行の不正融資やかぼちゃの馬車の悪質性はとても許されるものではありません。
ですが、このような事件があったからこそ、金融機関やシェアハウス業者への見方が厳しくなり、不正等ができなくなりました。
シェアハウスの経営エオ考えているなら、本記事で紹介した注意点などを参考にしてみてください。