「林業ってどんな仕事内容なの?収入は安い?」
「林業の魅力は?どうすれば働ける?」
このように、林業の仕事内容やなり方について疑問を持っている方は多いです。
結論から言えば、林業の収入は一般的なサラリーマンの平均年収より少し低くなります。
ただし、仕事の仕方によっては、サラリーマンよりも多くの収入を稼ぐことが可能です。
そこで本記事では、主に以下3点について紹介します。
- 林業の仕事内容や魅力
- 林業のスケジュールや収入
- 林業従事者になる方法
この記事を読むことで、林業の仕事への理解を深めることができ、安心して目指すことができます。
林業に興味がある方は、ぜひ、ご覧ください。
林業とは
林業とは、森に木を植えて育てたり、木を切って加工して販売するなど、貴重な資源である森林を守り活かす仕事です。
木を切り、木材を生み出すだけでなく、後世のために森を残す作業を行います。
日本は国土面積の70%が森林であるため、林業の仕事は非常に大切です。
平成27年に農林水産省が発表したデータによると、林業就業者は約6.4万人であり、2018年の新規林業従事者は約3,000人になります。
漁業就業者数が約15万人、農業就業者数が約175万人のため、林業の就業者数は非常に少ないです。
林業が盛んな地域は、「森林面積が広い」または「森林割合が多い」北海道や岩手県、長野県、高知県、岐阜県、大分県、熊本県などになります。
林業は、日本において必要不可欠な仕事であり、非常にやりがいのある仕事です。
林業をするといくら稼げる?気になる年収を徹底解説
ここでは、林業の平均年収や高収入の仕事、兼業(副業)をした場合の収入について、紹介します。
これらの内容を知ることで、収入面に関する疑問や不安を解消できるでしょう。
林業の平均年収
林業会社で月給制のケースもありますが、日給制や日給月給制であることが多いです。
仕事内容や現場で異なりますが、日給は概ね1万円〜1万5,000円、平均年収は330万円〜440万円程度になります。
月額に換算すると27.5万円〜36.6万円程度です。
ただし、初心者の場合は、日給7,000円〜9,000円前後の業者も多いため、月給は20万円前後になります。
国税庁が2019年9月に公表したサラリーマンの平均年収は約441万円でしたので、一般的なサラリーマンよりは少ない水準と言えるでしょう。
また、林野庁の「林業労働力の動向」によると、林業従事者の平均年齢は52.4歳(2015年時点)になります。
【高収入】森林官(国家公務員)
森林官として国家公務員の立場で林業に携われば、高収入を得ることができます。
森林官とは、国有林を健全に維持するために管理・運営する仕事です。
平均年収は680万円ほどで、他の林業の仕事よりも高収入になります。
【副業で高収入】兼業で林業
副業で林業をして収入を得ている人も少なくありません。
個人や集落といった小規模な自伐型林業であれば、初期コストも少なく、参入障壁が低いです。
農業をしながら、副業として林業をしている人もいます。
林業の日給は概ね1万円〜1万5,000円なので、週2日働けば月8万円〜12万円となり、副収入としては十分高い金額です。
また、なかには現場で不要となった木や枝を使って、薪を販売するなど、サイドビジネスを行っている人もいます。
「本業+林業」や「本業+林業+サイドビジネス」で高い副収入を得ることが可能です。
林業従事者になる5つの方法
ここで紹介する方法によって、林業従事者になることができます。
林業従事者になる方法を知れば、就業するための適切な情報収集や行動ができるようになるでしょう。
以下は、林業従事者になる5つの方法になります。
- 林業の会社に就職する
- 森林組合の現場職員(作業班)に入る
- 林業の第三セクターの職員になる
- 地方に移住して林業を始める
- 兼業で林業を始める
それぞれの方法について、1つずつ見ていきましょう。
方法1.林業の会社に就職する
林業従事者になる方法の1つが、民間の林業会社に就職することです。
民間会社には、
- 森林を保有する会社
- 森林を保有していない会社
上記の2通りがあり、森林を保有していない会社は林業の仕事を受託するスタイルです。
林業会社の主な仕事は主伐ですが、会社によって異なります。
民間の林業会社で経験を積み、将来的に独立する人も少なくありません。
方法2.森林組合の現場職員(作業班)に入る
森林組合に就職をして林業に従事する方法もあります。
森林組合とは、森林所有者が森林を守り林業を発展させることを目的とした協同組合のことです。
森林組合の現場職員(作業班)に入れば、組合員や自治体からの委託を受け、森林作業を行います。
全国に約700の森林組合があり、各組合で事業内容が異なるため、事前に確認をしましょう。
方法3.林業の第三セクターの職員になる
第三セクターの職員になり、林業従事者として活躍する方法もあります。
第三セクターとは、森林組合や自治体が共同出資をして設立した組織のことです。
若い従事者を確保することを目的として、各地で設立されています。
林業従事者になりたい場合は、第三セクターに就職するのも1つです。
方法4.地方に移住して林業を始める
住んでいるエリアに林業の仕事が見つからない・盛んでない場合は、地方に移住をして林業を始める方法も検討しましょう。
森林大国の日本では、林業が盛んな北海道や岩手県、岐阜県などへ行けば仕事があります。
そのため、移住先で林業に携わることが可能です。
移住支援が充実している地域がたくさんあるので、地方に興味がある方におすすめの方法になります。
方法5.兼業で林業を始める
前述のとおり、兼業で林業を始める方法もあります。
規模が小さくコストが抑制できる自伐型林業であれば、副業としても始めやすいです。
ただし、素人がいきなり伐採などすることはできないため、チェーンソーやパワーショベルなどの操作スキルや知識を事前に習得する必要があります。
林業をするならこの地域!補助金がもらえる自治体3選
林業の仕事は、機材や装備代金や整備した森林面積、切り拓いた作業道に対して国や自治体から補助金が出ます。
林業は大変な仕事であり、国の環境維持には欠かせないためです。
ここでは、林業におすすめの以下3地域の主な補助内容について紹介しています。
- 岩手県
- 岐阜県
- 北海道
1.岩手県
岩手県は、事業主向けの支援が充実しているためおすすめです。
岩手県林業労働対策基金では、林業就業者の育成確保を目的として次のような事業主支援を行っています。
- 「緑の雇用」現場技能者育成対策事業(約25万円〜約250万円)
トライアル雇用やOJT研修、キャリアアップ研修などの支援 - 林業就業促進資金貸付事業(150万円以内)
新たに林業に就業する人や事業主に対して就業促進資金を無利子で貸し付け - 新規参入対策事業(月額最大5万円)
若手労働者の林業参入を促進するため待遇改善を行っている事業体に奨励金を交付 - 人材育成対策事業(上限8,000円)
資格や免許を有する技術者養成のための費用を助成
このような支援で事業主の負担が緩和されることで、就業者の報酬にもプラスになります。
林業の仕事が盛んな地域であるため、岩手県はおすすめですよ。
もっと詳しく知りたい人は、岩手県林業労働対策基金を見てみてください。
2.岐阜県
岐阜県では、上限15万円の防護スボンやチェーンソー等の購入経費支援などを行っているためおすすめです。
ぎふ林業新規担い手支援事業では、次のような支援を行っています。
- トライアル雇用に対する支援(1万円/日)
新規就業者を指導する技術者向け支援 - 新規就業者に対する就業支援金の給付(上限15万円)
新規就業者の防護スボンやチェーンソー等の購入経費を支援 - 労働環境整備に対する支援(上限20万円)
女性や若者の雇用促進のため休憩所やトイレを購入する費用を支援 - 安全講習受講に対する支援(受講経費の1/2以内)
安全講習等の受講費用を支援
新規就業者または事業主への支援が充実していることから、恵まれた環境で林業の仕事ができます。
もっと詳しく知りたい人は、「岐阜県林業労働力確保支援センター」を見てみてください。
3.北海道
新規就業者や事業主向けの支援が充実しているため、北海道もおすすめになります。
主な支援内容は以下のとおりです。
- 林業就業促進資金(30万円〜150万円)
新規就業者の住居の移転、作業用具の購入等に必要な資金を無利子で貸し付け - 林業就業促進資金償還免除事業(返済免除)
4年以上林業に就業し、将来も継続が見込まれる場合は借入金の一部返済が免除 - 森林作業員就業条件整備事業(1日あたり最大360円)
森林作業員・事業主に対して市町村・道が掛金を負担し、作業員へ奨励金を支給。支給対象日数は140日以上250日まで、奨励金額は1日あたり320円〜360円。中小企業退職金共済制度又は林業退職金共済制度の共済契約者などが対象
国内で1番森林面積が広いエリアでもあり、多くの業者・団体があります。
さらに詳しく知りたい人は、「北海道森林整備担い手センター」を見てみてください。
知っておきたい!林業の仕事内容
ここで紹介する内容を知れば、林業の基本的な仕事内容を把握できます。
林業を目指す上で、以下8つの仕事を覚えておくことは必須です。
- 下刈り
- つる切り
- 伐採(主伐・間伐・除伐)
- 枝打ち
- 寒伏せ
- 集材・運材
- 地拵え
- 植え付け
それぞれの仕事内容について、1つずつ見ていきましょう。
仕事内容1.下刈り
下刈りとは、苗木の成長を妨げる雑草やつるなどを、草刈り鎌や草刈り機で除去する作業です。
苗木を植え付けて5年〜8年の間に行います。
雑草やつるがよく繁る場合は、年2回ほど実施するのが一般的です。
仕事内容2.つる切り
つる切りとは、木に絡まったつるを取り除く作業のことです。
つるが巻き付いてしまうと、幹が変形したり折れやすくなるため、つる切りを行います。
仕事内容3.伐採(主伐・間伐・除伐)
林業の代表的な仕事である伐採は、主伐(しゅばつ)・間伐(かんばつ)・除伐(じょばつ)の以下3種類に分けられます。
- 主伐:木材にするために成長した木を伐採すること
- 間伐:森の中が混雑して木の成長が遅れないように間引きすること
- 除伐:育った木の成長を邪魔する木やつるを除去すること
これらの伐採作業をすることで、木の成長を促し、木材として活用されます。
仕事内容4.枝打ち
枝打ちとは、地面から一定以上の高さにある枝を切ることです。
節のないキレイな木材を作るために枝打ちを行います。
仕事内容5.寒伏せ
寒伏せとは、冬が始まる前に苗木を土の中に埋める作業のことです。
寒冷期の凍害から苗木を守るために行います。
仕事内容6.集材・運材
主伐や間伐で切った木を集め、トラックなどに積み込み、貯木場や木材市場に運びます。
仕事内容7.地拵え
地拵え(じごしらえ)とは、苗木を植え付けるために、邪魔な枝や低木を除去する作業のことです。
枝葉や雑草を取り除き、植え付けしやすいように土地を整えます。
仕事内容8.植え付け
植え付けは、地拵えをした場所に苗木を丁寧に植える作業です。
苗木を動物から守るために、苗木の周囲に防護ネットを張り巡らせます。
林業の魅力
林業の魅力は、「貴重な資源である森林を守り、次世代に受け継ぐ大切な仕事であること」です。
国土面積の約70%が森林の日本において、森林を維持管理・育成・伐採をして、木材資源を生産する林業の仕事は重要になります。
さまざまな産業、多くの企業を支える仕事であり、その存在は不可欠です。
地球や国の大切な資源を扱い、育てていく林業の仕事は、とても魅力的な仕事になります。
林業従事者の体験談
ここでは、林業従事者の体験談を紹介しています。
体験談からは、従事している人のリアルな意見や感想を知ることが可能です。
そのため、WEBやSNSにアップされている体験談や口コミには、できるだけ目を通すようにしましょう。
以下は、林業従事者の3つの体験談です。
- 「森を守る仕事でやりがいがある」
- 「雨の日に仕事がなく収入が不安定」
- 「移住先の林業が盛んだったので始めた」
それぞれ紹介していきます。
体験談1.「森を守る仕事でやりがいがある」
「林業の森を守り、家や家具などの材料を作り出す仕事です。林業の仕事がなければ、日本の自然はどんどん破壊されてしまいます。森を守る仕事は、子供にも自慢できるものであり、非常にやりがいを感じています」
林業従事者の体験談で多く見られるのが、このような内容です。
林業は、森林を管理して守る重要な仕事であり、森林大国の日本では必要不可欠な存在になります。
貴重な資源である森林を、次世代に受け継いでいく仕事です。
非常にやりがいがある仕事であり、使命感を持って働いている林業従事者はたくさんいます。
体験談2.「雨の日に仕事がなく収入が不安定」
「林業は現場仕事なので、雨の日は仕事が休みになる。仕事がないと収入も入らないため、梅雨時期など雨が続くと非常に大変です。収入が不安定なのは、林業のネックだと言えます。」
このような内容の体験談は少なくありません。
林業は山間部での作業となるため、雨の日は休みになるケースが多いです。
雨が降ると、地盤が緩み、土砂崩れが発生する可能性があります。
また、重機やチェーンソーなども使うため、足元が悪い中での作業は危険です。
林業の多くが日給制や日給月給制なので、月額が保障されていません。
雨の日は仕事がなくなり収入が不安定になるため、就業した場合は資金管理が大切になります。
体験談3.「移住先の林業が盛んだったので始めた」
「都心では林業の仕事がほとんどなかったので、地方へ移住をして林業を始めました。結果から言うと、林業にも移住生活にも満足をしています。林業の仕事はやりがいがありますし、移住先では家賃補助などの支援があるので経済的に楽です。周囲の人も温かく、優しい人ばかりで幸せです」
このように、移住をして林業を始める人も多いです。
移住支援が充実していれば、移住後の生活に困ることもありません。
林業のスケジュール
ここでは、林業の年間スケジュールや1日の仕事の流れを紹介します。
その仕事を理解する上で、スケジュールの把握は必須です。
1年間・1日のスケジュールを知ることで、林業の仕事への理解がさらに深まるでしょう。
年間スケジュール
林業は、季節ごとで作業が変わってきます。
「夏・秋」「冬・春」の主な作業内容は次のとおりです。
「夏・秋」
- 下刈り
- つる切り
- 除伐
- 枝打ち
- 間伐
「冬・春」
- 寒伏せ
- 雪起こし
- 主伐
- 集材・運材
- 地ごしらえ
- 植え付け
※地域によって異なります。
たとえば、2月〜3月に「地ごしらえ」をして苗木を植えられるようにし、4月〜5月に苗木を植える「植裁」を行います。
そして、6月〜8月には、雑草などを刈り払う「下刈り」や「つる切り」を行い、苗木の成長を助けるのです。
9月〜10月に必要のない枝を切り落とす「枝打ち」「除伐」をし、11月〜12月に木の成長を助け、収穫するために「間伐」をして、木を切っていきます。
このように、林業は季節ごとの作業を行い、木材の収穫や森を育てる仕事です。
1日の仕事の流れ
1日の仕事の流れは、林業従事者ごとで異なります。
以下は、自伐林業を行う方の1日のスケジュールです。
- 機械置場へ行き、ユンボをトラックへ積み込む
- トラックで土場まで移動し、現場までユンボを回送
- ユンボで作業道を開設
- チェーンソーで間伐
- 作業車やユンボを使って集材
- トラックに積み込み市場や工場へ搬出
場合によっては、ユンボで作業道を開設したり間伐するのに、1週間かかることもあります。
人・現場で異なりますが、8時30分頃に現場へ集合し、定時は16時〜17時頃です。
※ユンボとは…油圧ショベル
※土場とは…トラックが入れる終点
林業の仕事に関する4つのQ&A
ここでは、林業の仕事に関して、よくあるQ&Aを紹介しています。
これらのQ&Aを見ることで、今抱えている疑問や不安を解消できるでしょう。
以下は林業の仕事に関する4つのQ&Aです。
- 林業の仕事でどんなキャリアが積める?
- 林業はどんな人に向いている?
- 女性でも林業はできる?
- 未経験でも大丈夫?
1つずつ、確認していきましょう。
Q&A1.林業の仕事でどんなキャリアが積める?
長期に渡って林業の経験を積めば、一通りの作業や進め方を理解でき、多くの森林関係者と人脈を築けます。
そして、森林所有者への営業活動、伐採計画の立案など、1つ上のステップに進むことが可能です。
Q&A2.林業はどんな人に向いている?
林業は、次のような人に向いています。
- 森林を守りたい人
- 森林に携わる仕事をしたい人
- 技術を身に着けたい人
- 体力に自信がある人
- 地方で仕事をしたい人
このような人は、林業が向いていると言えます。
林業は、国の森林を守るとても重要な仕事です。
Q&A3.女性でも林業はできる?
力仕事で体力も必要ですが、女性の参入も進んでいます。
業界も女性の参入を促進しており、今後活躍する女性が増えていくことが考えられるでしょう。
Q&A4.未経験でも大丈夫?
林業への就業は未経験でも問題ありません。
むしろ、ほとんどの方が未経験から始めています。
研修や国の就業サポートもありますので、意欲や熱意があれば、林業に就業できますので安心してください。
まとめ
ここでは、林業の年収や仕事に就く方法、おすすめ自治体などについて紹介いたしました。
最後に、ここで紹介した大事なポイントを4点まとめています。
- 林業は日給制や日給月給制が多いがサラリーマンの平均年収とあまり変わらない
- 仕事の仕方や職種によってはもっと稼げる
- 林業の仕事に就くには会社や組合への就職以外に移住する方法もある
- 森を守り次世代に受け継ぐやりがいのある仕事
林業に興味を持っている方は、ここで紹介した内容を参考にして、早速行動していきましょう。