空き家対策特別措置法について、お調べではないですか。
空き家対策特別措置法についての情報が載っているサイトは少なく、わかりづらいものも多いです。
空き家対策特別措置法ができたことで、空き家所有者は、行政指導や行政処分を受ける可能性が高くなりました。
ただ、詳しい内容を知っていないと、どんな点に気をつけていいのかすらわかりません。
場合によっては、特定空き家に指定され、固定資産税が6倍になる可能性もあります。
空き家を持つあなたが損をしないように、本記事で紹介する内容は次の4点です。
- 空き家対策特別措置法の内容
- 特定空き家の基準
- 行政指導を避ける方法
- 空き家を所有するデメリットや手放すメリット
これらの内容について、わかりやすく解説しています。
この記事を読めば、空き家対策特別措置法への理解が深まり、行政指導や処分を回避できます。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
1.空き家対策特別措置法とは
空き家対策特別措置法とは、全国に増え続ける空き家問題を解消するために、2015年に施行された法律のことです。
2019年4月に公表された全国の空き家数は約846万戸で、前回調査時よりも約26万戸も増えています。
空き家が増えると、
- 犯罪リスクの上昇
- 災害リスクの上昇
- 衛生面の問題
- 資産価値の下落
- 景観の問題
など、さまざまなリスク・問題が生じてしまい、近隣住民にも迷惑を掛けます。
これまでは法律がなかったため、条例を作り対策をしても、強制力はありませんでした。
しかし、空き家対策特別措置法ができたことで、自治体は、抜本的な空き家対策ができるようになります。
空き家対策特別措置法で、定められている主な内容は、次の6点です。
- 空き家の実態調査
- 所有者に対する管理指導
- 跡地の活用促進
- 特定空き家への指定
- 特定空き家への助言・指導・勧告・命令
- 特定空き家への罰金や行政代執行
空き家対策特別措置法が施行されたことで、より具体的な空き家対策が可能になりました。
ここからは、空き家対策特別措置法を深く理解するために「言葉の定義」や「処分の内容」について、解説していきます。
1-1.「空き家」の定義
まずは、「空き家」がどのような状態の建物を指すのか、定義について確認していきましょう。
空き家と判断する際の条件は、空家等対策の推進に関する特別措置法 2条で、次のように定められています。
「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む)」
難しい言い回しをしていますが、内容は単純です。
簡単に言うと1年を通して、
- 人の出入りがない
- 電気が点いていない
- ガスが使われていない
- 水道が使われていない
などの点を満たした物件が、空き家であると判断されます。
そのため、
- もう何年も人の出入りを見たことがない
- 昼夜問わず、電気が点いていない
- 水道やガスメーターを見ても一切使用された痕跡がない
- 所有されているが1年以上使われていない
などの物件がある場合は、空き家と判断される可能性が高いでしょう。
まとめると、「人の出入りがなく、使用されている痕跡もない家は空き家と判断される」ということです。
1-2.市町村の行政指導、命令
空き家対策特別措置法が施行されたことで、各自治体は適正管理ができていない空き家所有者に対し、行政指導や命令を出せるようになっています。
具体的な行政指導は、次の3点です。
- 助言
- 指導
- 勧告
そして、これらの行政指導をしても状況が改善されない場合は、命令を出すことができます。
命令は、所有者が従わない場合に罰金が科せられるなど、非常に重い内容です。
ここでは、自治体が空き家所有者に出す、行政指導や命令の内容について、詳しく見ていきましょう。
空き家所有者は、このような行政指導・行政処分を受けなくていいように、適正管理しておくことが大事です。
1-2-1.助言
空き家所有者が物件の適正管理をしていない場合に、最初に行う行政指導が助言です。
自治体から、
「庭の草が伸びているので除草してください」
「庭の家財道具やゴミを片付けてください」
などの助言があった場合、空き家所有者はすぐに対応しましょう。
なぜなら、このような助言がある時は、近隣住民から自治体に苦情が寄せられているからです。
しかし、助言は法的効力がないので、助言を受けてどうするかは、所有者自身が判断することになります。
助言の段階で対応しない所有者に対して、とられる対処法は次の「指導」です。
1-2-2.指導
指導は、
- 助言をしても改善が見られない場合
- 助言に従わない場合
- すぐに改善が必要な場合
などに行われる行政指導です。
助言よりも重いもので、空き家所有者に対して適正管理を促します。
所有する空き家に対して指導があった場合は、自治体に多くの苦情が寄せられているということです。
空き家所有者は、近隣住民のためにもすぐに対処する必要があります。
所有者は、指導を受けた内容の経過状況や改善結果を、自治体に連絡するのが一般的です。
そのため、もし指導を受けた場合は、自治体と密にコミュニケーションをとるようにしましょう。
もし、指導を受けても状況が改善されない場合は、より重い行政指導である「勧告」を受けることになります。
1-2-3.勧告
勧告は、
- 指導を受けても状況が改善されない場合
- 近隣住民に被害をもたらす可能性がある場合
などに実施される行政指導です。
つまり、指導をしても何ら適正管理をしない所有者に対して、非常に強い意味合いで改善を促すものになります。
勧告を受けるような空き家は、
- 防犯
- 災害
- 景観
- 衛生
など、さまざまな面で周辺に悪影響を与えており、一刻も早い対応が必要です。
いわゆるゴミ屋敷など、勧告を受けるような空き家が1軒あるだけで、そのエリアの資産価値が下がる可能性もあるでしょう。
もし、特定空き家に指定された後に、勧告を受けることになれば、固定資産税の優遇措置が適用されなくなります。
優遇されなくなると、それまでの6倍近い固定資産税が課税されることになります。
そのため、所有者には迅速な対応が求められるのです。
所有する空き家が勧告を受けた場合は、これまでの考えを改め、直ちに適正管理を行いましょう。
1-2-4.命令
所有者が、「助言」「指導」「勧告」と行政指導を受けても適正管理をしない場合は、自治体から改善の命令が出されることになります。
命令は、これまでの行政指導とは異なる行政処分で、非常に重いものです。
もし、空き家所有者が命令に従わない場合は、最大50万円の罰金が科されることになります。
それでも改善が見られない場合は、強制的に撤去や解体が行われ、所有者に費用が請求される行政代執行が実施されるでしょう。
命令は、自治体の通告の中で最も厳しいものです。
命令が出されるということは、近隣住民に相当な迷惑となっているだけでなく、危険性も非常に高い可能性があります。
空き家が火事になったり、地震で倒壊をして、他の住宅や人を巻き込むかもしれません。
万が一、命令を受けることになった場合はラストチャンスだと認識し、即座に対応をするようにしてください。
2.「特定空き家」とは
空き家対策特別措置法の施行によって、特定空き家に指定される可能性が出てきました。
特定空き家に指定された後、自治体から勧告を受けた場合は、土地の固定資産税優遇措置が適用されなくなり、税額が更地の6倍になります。
どのような状態になると、特定空き家に指定されるのか、定義の確認と合わせて見ていきましょう。
2-1.特定空き家に指定されるまでの流れ
指定を受ける際の、大まかな流れは次の4つです。
- 土地家屋調査士や自治体職員が訪問の立ち入り調査
- 空き家対策特別措置法の4つの基準に該当するか判断
- 特定空き家として指定
- 行政指導・行政処分 or 改善して指定解除
もし、特定空き家に指定された場合でも、不適切な箇所が改善できれば指定は解除されます。
3.特定空き家の4つの基準
空き家対策特別措置法のガイドラインで定められる判断基準に該当する場合は、特定空き家の指定を受ける可能性があります。
特定空き家とは、倒壊の危険性や衛生上有害で、近隣住民の生活に大きな支障を与えるような家のことです。
以下は、4つの判断基準です。
- 倒壊の危険性がある
- 衛生上有害である
- 著しく景観を損なう
- 生活環境を著しく乱す
特定空き家の判断基準やケースを知ることは、指定を回避することにもつながります。
1つずつ、内容を確かめていきましょう。
基準1.倒壊の危険性がある
特定空き家の1つ目の基準が、倒壊の危険性があることです。
たとえば、
- 家が倒壊する
- 屋根が飛散する
- 外壁が脱落する
- 擁壁が崩れる
- 看板が落下する
- 門が倒壊する
などの危険性がある状態だと、特定空き家に指定されてしまいます。
このような家は、台風や地震などの自然災害時に倒壊する可能性があるため、大変危険です。
基準2.衛生上有害である
著しく衛生上有害なことも、特定空き家の判断基準になります。
具体的には、次のような状態の場合です。
- ごみが放置されている
- 家具・家電など不法投棄されている
- 害虫や害獣が発生している
- 汚物の異臭がする
このような状態だと、近隣住民の日常生活にも大きな支障を及ぼします。
そのまま放置すれば衛生上有害な建物と判断され、特定空き家の指定を受けるでしょう。
基準3.著しく景観を損なう
特定空き家の判断基準の1つが、著しく景観を損なう状態です。
具体的には、以下のような状態が該当します。
- 外壁に落書きがある
- 窓ガラスが割れている
- 看板が破損している
- 敷地内にごみが散乱している
- 家を草木が覆っている
- 屋根がひどく汚れている
このような状態で放置されている空き家は、著しく景観を損なう状態と判断され、特定空き家として指定を受けるでしょう。
基準4.生活環境を著しく乱す
生活環境を著しく乱すことも、特定空き家の1つの判断基準になります。
生活環境を著しく乱す状態とは、以下のようなケースです。
- 害虫や害獣が発生している
- 立木が腐朽、倒壊、枝折れしている
- 立木がはみ出している
- 動物が昼夜問わず鳴いている
- 動物のふん尿や汚物による異臭がする
- 不審者が侵入している
このような空き家は、近隣住民の生活環境に大きな影響を与えます。
近隣住民に怪我を負わせる恐れもあるため、空き家所有者はすぐに改善を図るべきです。
4.特定空き家に指定されると
特定空き家に指定されると、固定資産税の優遇措置が適用外になる可能性があります。
具体的には、特定空き家に指定された後に、勧告を受けた場合です。
優遇措置が適用外になると、土地の固定資産税が更地状態の6倍まで高くなります。
状況が改善されないと、命令や行政代執行となる可能性もあるため、所有者は速やかに対処することが必要です。
繰り返すようですが、特定空き家になり勧告を受けると、固定資産税が一気に高くなりますので気をつけましょう。
5.空き家対策特別措置法の行政指導を避ける方法
空き家対策特別措置法の行政指導や行政処分を回避したいなら、管理を徹底したり、賃貸や売却に出しましょう。
そうすれば、空き家に関する行政指導や行政処分を受けることはありません。
行政指導を避ける方法をまとめると以下の3つです。
- 空き家の管理を徹底する
- シェアハウスや賃貸などで空き家を活用する
- 空き家を売却する
心配な方は、ここで紹介する方法を実行すれば確実に行政指導を避けられますよ。
方法1.空き家の管理を徹底する
空き家対策特別措置法の行政指導を受けないようにするため、空き家の管理を徹底するようにしましょう。
行政指導を受ける理由は、管理ができておらず、近隣住民に迷惑をかけるためです。
- ゴミが溜まっている
- 悪臭がする
- 虫や野生動物が住んでいる
- 窓ガラスが割れている
- 落書きされている
などの状態であれば、管理できているとは言えません。
適正な管理とは、街の景観を損なわず、衛生的で近隣に迷惑がかからない状態です。
行政指導を受けなくていいように、空き家の管理を徹底してください。
方法2.シェアハウスや賃貸などで空き家を活用をする
空き家対策特別措置法の行政指導を回避するために、空き家を活用するようにしましょう。
シェアハウスや賃貸に出せば、空き家ではなくなります。
さらに、借り手が見つかれば家賃収入が入ってきます。
貸す側にとって家賃収入は大きなメリットです。
空き家の維持費や税金を、家賃収入から支払うことができます。
シェアハウスや賃貸での空き家活用は初期費用はかかりますが、空き家状態を解消でき、家賃収入を得られる魅力的な方法です。
5-3.空き家を売却する
空き家を売却すれば、空き家対策特別措置法の行政指導を受ける心配がありません。
売却をすれば、他人に所有権が移りますし、税金や修繕費用の支払いもなくなります。
また、まとまったお金が入ってくることも売却するメリットです。
空き家に住む予定がない場合は、売却をおすすめします。
6.空き家を所有し続ける4つのデメリット
近隣住民に迷惑をかけたり、お金がかかるなど、空き家を所有し続けることにはデメリットが多くあります。
デメリットを知った上で、所有し続けるか手放すか、あなたに合った適切な判断をしましょう。
空き家を所有し続けるデメリットは、次の4点になります。
- 景観や治安の悪化につながる
- 資産価値が低下する
- 修繕費用がかかる
- 固定資産税がかかる
それぞれの内容について、確かめていきましょう。
デメリット1.景観や治安の悪化につながる
景観や治安の悪化につながることが、空き家を所有し続ける1つのデメリットです。
空き家になると、
- ゴミや廃棄物を投棄される
- 窓ガラスを割られる
- 落書きされる
などの問題が発生し、景観や治安の悪化につながってしまいます。
また、ニオイや害虫が発生して、衛生面でも問題になるでしょう。
このような状態で放置していると、放火などの二次被害も誘発してしまいます。
適正な管理ができている場合はいいですが、そうでない場合は、景観や治安の悪化につながることを理解しておきましょう。
デメリット2.資産価値が低下する
資産価値が下がることも、空き家を所有し続けるデメリットと言えます。
建物や庭、外構の維持管理が、どうしても二の次となるためです。
また、空き家になると需要自体も減ってしまいます。
資産価値が下がると、売却をしても高値は期待できません。
空き家として所有し続けることで、資産価値が下がる可能性があることを理解しておきましょう。
デメリット3.修繕費用がかかる
空き家を所有し続けるデメリットが、修繕費用がかかることです。
たとえ、空き家であっても、定期的に修繕やメンテナンスをする必要があります。
修繕やメンテナンスをしていないと、
- 雨漏り
- フローリングや畳のカビ
- 水まわりのサビやカビ
- 設備の故障
など、さまざまな問題が生じます。
老朽化が進み、資産価値が低下するため、売却も難しくなるでしょう。
また、犯罪の温床や景観を損なう存在となり、近隣住民に多大な迷惑をかけることになります。
現在、生活をしている家と空き家の両方の修繕費用がかかるため、経済的負担は大きいです。
空き家を所有し続ける場合は、修繕費用のことも頭に入れておいてください。
デメリット4.固定資産税がかかる
空き家といえども、所有し続ける限りは固定資産税がかかります。
固定資産税は、毎年1月1日時点の不動産所有者に課せられるため、空き家の場合でも納税が必要です。
また住む予定があればいいですが、住む予定がないのに税金を払い続けるのは損でしかありません。
固定資産税がかかり続けることは、空き家を所有し続けるデメリットになります。
7.空き家を手放す3つのメリット
空き家を手放せば、維持費から開放され、まとまったお金が手に入るなどのメリットがあります。
空き家を手放すメリットを知れば、所有し続ける場合との比較が簡単です。
どちらの方が自分にとって得が多いか、判断材料にしてください。
以下は、空き家を手放す3つのメリットです。
- 空き家の維持費がかからない
- まとまったお金が入る
- 3,000万円の譲渡所得控除で節税できる
1つずつ、紹介していきます。
メリット1.空き家の維持費がかからない
空き家を手放すメリットの1つ目が、維持費がかからなくなることです。
空き家を所有し続ける以上、固定資産税や修繕費用がかかります。
特に、固定資産税は毎年必ず発生するので大きな負担です。
空き家を手放せば、これらの費用負担から開放されます。
家計負担を減らしたいのであれば、空き家は手放した方がいいでしょう。
メリット2.まとまったお金が入る
まとまったお金が入ることも、空き家を手放すメリットです。
空き家を売却すれば、売却代金を手にすることができます。
住宅ローン残債などで変わりますが、1,000万円以上入ってくる可能性も十分考えられるでしょう。
空き家を放置していても、お金が出ていくだけで、何らメリットはありません。
しかし、売却をすればまとまったお金が手に入り
- 新居購入費用
- リフォーム費用
- 老後資金
- 生活資金
など、さまざまなことに使えます。
高く売りたい場合は仲介売却、早く現金化したい場合は買取がおすすめです。
まとまったお金を手にできることは、空き家を手放すメリットと言えます。
メリット3.3,000万円の譲渡所得控除で節税できる
空き家を処分する場合は、3,000万円の譲渡所得控除によって節税できる点もメリットです。
空き家問題を解消するため、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」が用意されています。
この特例は、要件を満たす空き家を売却した場合に譲渡所得から3,000万円が控除される、というものです。
特例により、空き家を売却して3,000万円の利益が出たとしても、税金が課せられることはありません。
この特例がない場合は以下の税率が課せられ、かなり大きな税負担となります。
- 所有期間5年未満:所得税30%、住民税9%
- 所有期間5年以上:所得税15%、住民税5%
※復興特別所得税(所得税額の2.1%)もかかります。
3,000万円の譲渡所得控除は、空き家処分を後押しするメリットです。
7-3-1.3,000万円控除の適用条件
3,000万円控除は、すべての空き家が対象になるわけではありません。
控除対象になるには、適用条件を満たす必要があります。
以下は、相続した空き家で、特例控除を受けるための適用条件です。
- 昭和56年5月31日以前に建築されていること
- 相続前まで被相続人が住んでいたこと
- 相続してから3年以内に売ること
- 売却金額が1億円以下であること
- 売却する前に耐震補強をしていること
などの条件があり、クリアすることは簡単ではありません。
空き家を売却する場合は、3,000万円控除の対象かどうか確認をしましょう。
まとめ
今回は、空き家対策特別措置法の内容や行政指導を避ける方法、空き家所有のデメリットなどについて、紹介しました。
最後にもう1度、大事な4つのポイントを覚えておきましょう。
- 空き家対策特別措置法は、空き家問題を解消するためにできた法律
- 行政指導や行政処分を受けることは近隣に迷惑をかけている
- 命令に背くと最大50万円の罰金、特定空き家だと税制優遇解除の恐れ
- 空き家は放置していてもメリットはなし、売却など早めの処分がおすすめ
ぜひこの機会に、空き家をどうするのか、真剣に考えてみましょう。