「消滅可能性都市って何?日本にあるの?」
など、「消滅可能性都市」が何なのか疑問を持っていることでしょう。
消滅可能性都市とは、いずれ失くなる可能性がある自治体のことで、日本には800超存在しています。
これは、全国の市区町村の約半分であり、驚くべき数字です。
これからも人口減少、少子高齢化が進む日本において、大きな問題となっています。
本記事では、消滅可能性都市が生まれる背景や弊害などについて、紹介しています。
この記事を読めば、消滅可能性都市について理解でき、この問題を考えるきっかけとなるでしょう。
1. 消滅可能性都市とは
「消滅可能性都市」とは、人口減少(流出)や少子化が進むことで存続ができなくなり、消滅の可能性がある自治体のことで、2014年に日本創成会議が指摘をしました。
ここでは、消滅可能性都市の定義や該当する自治体数などについて、紹介していきます。
「消滅可能性都市」の定義
日本創成会議によると「消滅可能性都市」は、次のように定義されています。
「2010年から2040年にかけて、20〜39歳の若年女性人口が5割以下に減少する市区町村」
9割の女性が20〜39歳で出産をすると言われており、この年代の女性が50%以上減少することで、人口が維持できなくなり消滅の可能性があるということです。
しかし、第二次ベビーブーム世代はすでに40歳を超えているため、出産年齢女性の人口は減少が続いています。
また、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によると、2015年に1億2,709万人だったのが、2040年には1億1,092万人、2053年には9,924万人まで減る予測です。
つまり、出産年齢女性も人口自体も減少が続く中、定義に当てはまる自治体は増加する可能性が高いと言えます。
消滅可能性都市は日本全国で「896自治体」もある
全国にある1,799の市区町村のうち、消滅可能性都市は896もあります。
約50%の割合であり、市区町村2つに1つが消滅可能性都市であるということです。
また、消滅可能性都市に該当する896市区町村のうち、523は人口1万人未満であり、消滅の可能性がさらに高いことが報告されています。
つまり、全国の市区町村の「2つに1つが消滅可能性都市」で、「3〜4つに1つが消滅の可能性が高い地域」ということです。
主な消滅可能性都市
消滅可能性都市に該当する主な市区町村は、次のとおりです。
- 南牧村(群馬県)
- 今別町(青森県)
- 神流町(群馬県)
- 夕張市(北海道)
- 松前町(北海道)
- 吉野町(奈良県)
- 那賀町(徳島県)
- 高野町(和歌山県)
- 神山町(徳島県)
- 能勢町(山梨県)
- 若桜町(鳥取県)
- 能登町(石川県)
- 新上五島町(長崎県) など
日本創成会議の推計によれば、青森県、岩手県、秋田県、山形県、島根県にある市町村の8割以上が消滅可能性都市になります。
秋田県に関しては、大潟村を除くすべての自治体が消滅可能性都市です。
消滅可能性都市の割合が最も低いのが愛知県(10.1%)で、次に滋賀県や神奈川県、東京都が続いています。
2. 消滅可能性都市が生まれる4つの背景
消滅可能性都市が生まれるのには理由があります。
どのような理由・背景で消滅可能性都市が生まれるのか、知っておくことは重要です。
理由や背景がわかれば、消滅可能性都市を防ぐことが、いかに難しいかも理解できます。
以下は、消滅可能性都市が生まれる主な4つの背景です。
- 人口減少
- 少子高齢化
- 都市部への人口流出
- 出産年齢女性の人口減少
1つずつ、確認していきましょう。
背景1.人口減少
日本の人口減少が進んでいるため、消滅可能性都市が生まれます。
調査主体によって数値は異なりますが、各調査に共通しているのが、2050年前後に総人口が1億人を下回るということです。
総務省の推計では、2050年に9,708万人、2100年には少なくて3,795万人、多くても6,485万人としています。
人口減少で出産年齢女性の数も減るので、消滅可能性都市がたくさん生まれるのは当然のことです。
人口減少のスピードが加速すれば、より多くの消滅可能性都市が生まれることになります。
背景2. 少子高齢化
少子高齢化も、消滅可能性都市を生み出す原因の1つです。
少子高齢化が進めば、出産年齢女性が増えることはありません。
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」によると、以下のように少子高齢化は益々進むことになります。
2020年 | 2030年 | 2040年 | 2050年 | 2060年 | |
総人口 | 1億2,410万人 | 1億1,662万人 | 1億728万人 | 9,708万人 | 8,674万人 |
65歳以上人口 | 3,612万人 | 3,685万人 | 3,878万人 | 3,768万人 | 3,464万人 |
高齢化率 | 29.1% | 31.6% | 36.1% | 38.8% | 39.9% |
15歳〜64歳人口 | 7,341万人 | 6,773万人 | 5,787万人 | 5,001万人 | 4,418万人 |
〜14歳人口 | 1,457万人 | 1,204万人 | 1,073万人 | 939万人 | 792万人 |
※中位推計:合計特殊出生率1.35の場合
高齢者(65歳以上)人口は2042年にピークを迎える見込みですが、総人口が減少しているため、高齢化率は上昇を続けます。
高齢化率は、2100年に41%程度まで上昇していると考えられています。
背景3.都市部への人口流出
地方から都市部への人口流出も、消滅可能性都市を生む要因となっています。
総務省が2019年に発表した、住民基本台帳に基づく外国人を含む人口移動報告(2018年)によると、東京圏の転入超過は139,868人です。
前年比で14,338人増加しており、日本人の転入超過は23年連続となっています。
また、東京圏以外では、愛知県、大阪府、福岡県も転入超過となっている地域です。
進学や就職などが理由で、毎年多くの若者が地方から都市圏へ流出しています。
そして、地方に戻る若者が少ないことで、消滅可能性都市が生まれてしまうのです。
※東京圏…東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県
※転入超過…転入者が転出者を上回ること
背景4.出産年齢女性の人口減少
出産年齢女性が減っていることも、消滅可能性都市が生まれる要因の1つです。
先に紹介した通り、女性が出産する年齢は9割以上が20歳〜39歳になります。
しかし、この世代の女性の数は減少が続いており、合計特殊出生率も1.4程度です。
日本創成会議の発表は、出生率1.4程度が続けば30年〜40年後には若年女性が現在の5割まで減少するという予測しています。
出生年齢女性の数が減ることで、子供も少なくなり、さらに出生年齢女性が減少していくという悪循環です。
出生年齢女性が少なくなれば、消滅可能性都市は増えることになります。
3. 東京23区で唯一の消滅可能性都市「豊島区」
全国の896自治体が消滅可能性都市であることが発表された中で、23区で唯一入っていたのが豊島区です。
なぜ、23区で豊島区だけが消滅可能性都市になったのか、その理由や豊島区の対策について紹介します。
豊島区が消滅可能性都市になる理由
豊島区が消滅可能性都市になっている理由として考えられるのは、「転出入が活発で定住率が低い」からです。
総務省の「平成22(2010)年国勢調査」によると、豊島区の定住率(23区比較)は46.0%で、3番目に低いエリアになります(最下位:港区40.7%、2番目:中央区43.7%)。
豊島区の定住率が低い理由になるのが、若年世代の単身世帯が非常に多く、外国人比率が高いことです。
2016年時点で2万5,000人近い外国人の方が住んでいます(人口比約9%)。
このような理由から、豊島区の人口は増加傾向であるものの、消滅可能性都市に選ばれたと考えられるでしょう。
現在進めている豊島区の対策
豊島区は、消滅可能性都市の発表後すぐに対策会議を開いています。
そして、会議の翌年には11事業、8,800万円の予算が決定しました。
2016年には、女性目線ですべての人が住みやすい街づくりを目指す「女性にやさしいまちづくり担当課」を設置しています。
住民参加型で街づくりについて会議する「としまぐらし会議」も生まれました。
この他にも、消滅可能性都市と発表されてから、豊島区ではさまざまな対策が施されています。
4. 消滅可能性都市になることの5つの弊害
消滅可能性都市になれば財政難となり、公共交通機関・公共施設やインフラ整備など多くの部分に弊害が出ます。
2006年に人口減が原因で破綻した北海道夕張市では、住民が多くの負担を強いられることになりました。
消滅可能性都市になれば、同じような弊害・負担が出ることが考えられます。
ここでは、以下、消滅可能性都市になることの5つの弊害について確認していきましょう。
- 電車やバスの本数・路線が減る
- 学校や病院が統合により大幅に減る
- 図書館や集会所など公共施設がなくなる
- 税金や手数料が高くなる
- インフラ整備が進まず災害リスクが高まる
弊害1.電車やバスの本数・路線が減る
消滅可能性都市になると、電車やバスの本数・路線が減ることになります。
地域を運行するバスが来なくなって、高齢者が買い物や病院に行きづらくなるでしょう。
電車の本数が減ればますます不便になり、人口流入どころか流出が増えることになります。
公共交通機関にも影響が出て、不便を強いられることになるのが消滅可能性都市の弊害です。
弊害2.学校や病院が統合により大幅に減る
消滅可能性都市になると、コスト削減のため学校や病院が統合され、大幅に減ることになります。
財政破綻をした夕張市は、200床以上の総合病院が19床の診療所に変更されたり、小学校6校が1校に統廃合されました。
人口減や財政難で、従来の学校や病院の数を維持できなくなるのです。
消滅可能性都市になれば、学校や病院にまで影響が出てしまいます。
弊害3.図書館や集会所など公共施設がなくなる
図書館や集会所などの公共施設がなくなることも、消滅可能性都市になる弊害です。
公共施設の維持管理費用の捻出が難しくなるため、施設の大半が廃止に追い込まれてしまいます。
そのため、施設を利用したイベントや住民サービスも実施が難しくなるでしょう。
住民の憩いの場が少なくなり、家族や友人と出かける場所も少なくなってしまいます。
「あるのがあたりまえ」の公共施設にまで影響が出るのが、消滅可能性都市の恐いところです。
弊害4.税金や手数料が高くなる
消滅可能性都市になれば、財政難で税金や手数料が高くなる可能性があります。
人口減によって財政破綻した夕張市では、市民税が引き上げられ、窓口業務の各種手数料も高くなりました。
自治体が財政難でお金がなく、公共サービス等を提供するための財源確保のためです。
人口や企業が少なくなり税収が減るため、さまざまな部分にしわ寄せが出ます。
- 「人口・企業が減る」
- 「税収が減る」
- 「公共サービスの質が落ちる」
- 「財源確保のために手数料等がすべて高くなる」
- 「さらに人口や企業が減る」
という悪循環に陥ります。
このように、税金や各種手数料が高くなることも、消滅可能性都市になる弊害です。
弊害5.インフラ整備が進まず災害リスクが高まる
インフラ整備が進まず災害リスクが高まることも、消滅可能性都市の弊害です。
財政難になるとインフラコストを迎えるため、どうしてもインフラ整備は不十分になります。
消滅可能性都市は山間地に多いため、災害時に大きな被害が出るでしょう。
高齢者が多いため、災害が発生した場合は心配です。
消滅可能性都市になると、災害時の危険性が高まることになります。
まとめ
残念ながら、人口減少、少子高齢化が進む日本において、消滅可能性都市が増えていくことは確実です。
しかし、各自治体が対策を施せば、消滅可能性都市の増加スピードを抑えることができるでしょう。
大切なのは、一人ひとりがこの問題を理解し、向き合うことです。
そうすることで、各自治体もいろんな対策が打てるようになるでしょう。
まずは、ご自身が住んでいる自治体の状況、消滅可能性都市かどうかを確認してみてください。
※参考文献
- (出展)厚生労働省「若者(15~39歳)の意識に関する調査」(2013年).(https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12605000-Seisakutoukatsukan-Seisakuhyoukakanshitsu/0000022199.pdf)