不動産投資を「節税目的」で始めるのはNG!節税できる2つの仕組みと初心者がハマる罠

「不動産投資をするとなぜ節税できるの?」

「節税目的で不動産投資を始めても大丈夫?」

など、不動産投資の節税について気になっていますね。

不動産投資が節税に有効だと聞いても、どうして節税できるのか、本当に節税効果はあるのか、がわからないとなかなか手を出しづらいものです。

結論から言うと、不動産投資には節税効果があります

ですが、節税効果だけを求めて不動産投資をするのは大変危険です。

そこで本記事では、誰でも簡単にわかるように「不動産投資で節税ができる仕組み」について丁寧に解説しています。

節税の仕組みを理解した上で、不動産投資が自分にとってお得な手段かどうかを判断していきましょう。

今回は、以下2点について詳しく解説をしています。

  • 不動産投資で節税ができる仕組み
  • 節税目的の不動産投資が失敗するケース

また、すでに不動産投資を始めている方向けに賢く節税するためのポイントも紹介しています。

不動産投資では、節税について知っておくだけで手元に残るお金が大きく変わります

ぜひ参考にしてみてくださいね。

不動産投資で節税ができる代表的な「2つの仕組み」

まずは、不動産投資で節税ができる仕組みについて知っていきましょう。

仕組みを知らないだけで10万円以上損している方もたくさんいます

そうならないために、ここからは不動産投資で節税がきる以下2つの仕組みを紹介していきます。

  1. 赤字を他の所得と合算して「所得税」と「住民税」を減らせる
  2. 現金よりも相続税が安い

1つずつ、見ていきましょう。

仕組み1.赤字を他の所得と合算して「所得税」と「住民税」を減らせる

不動産投資で出た赤字を、他の所得と合算できます。

そのため、税金がかかるはずだった収入が圧縮されて、支払う税金を減らすことができるのです。

この仕組みは「損益通算」と呼ばれています。

たとえば、不動産所得が200万円の赤字で、給与所得が400万円の場合、「−200万円+400万円」で総所得は200万円になります。

所得税と住民税がかかるのは「総所得」に対してです。

そのため、不動産所得である-200万円の分だけ総所得が減ることで、税額が下がります。

これで「給与所得400万円だけの場合に比べて節税できている」と言えます。

具体的に不動産投資による節税効果を知るために、ここからシミュレーションしていきますね。

以下は、所得税と住民税の税率です。

●所得税

所得額 税率 控除額
195万円以下 10% 9万7,500円
195万円超330万円以下 20% 42万7,500円
330万円超695万円以下 23% 63万6,000円
695万円超900万円以下 33% 153万6,000円
900万円超1,800万円以下 33% 153万6,000円
1,800万円超4,000万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円超 45% 479万6,000円

●住民税

所得割 税率10%
均等割 5,000円

※自治体によって異なる場合があります。

たとえば、「給与所得のみで500万円を稼ぐサラリーマン」と「損益通算で300万円になる大家さん」の場合では、所得税と住民税は次のように差があります

※実際には所得税と住民税で控除が異なりますが、ここではわかりやすく同じとしています。

給与所得500万円のサラリーマン

給与所得が500万円の場合は、所得に対して以下の所得税と住民税が課税されます。

所得税 57万2,500円(500万円×税率23%−控除63万6,000円)
住民税 50万5,000円(500万円×税率10%+5,000円)
合計 107万7,500円

損益通算で300万円になる大家さん

給与所得が500万円で不動産所得が-200万円の場合、損益通算によって所得が300万円になります。この場合の所得税と住民税は以下のとおりです。

所得税 57万2,500円(500万円×税率23%−控除63万6,000円)
住民税 50万5,000円(500万円×税率10%+5,000円)
合計 107万7,500円

このように、サラリーマンと大家さんが同じ給与所得だとしても、損益通算により、大家さんの方が57万円も税金が安くなっています。

不動産投資は「損益通算」を賢く使うことで給与所得だけの場合よりも節税することができるのです。

仕組み2.現金よりも相続税が安い

不動産投資で節税できる2つ目の仕組みは、不動産は現金に比べて大幅に相続税が安いことです。

不動産は現金よりも相続時の評価額が低いため、相続税を減らすことができます。

たとえば、現金1億円を相続する場合の評価額は、額面通りで1億円です。

しかし、不動産であれば5,000万円〜6,000万円で評価されます。

現金の半分ほどの評価額になるため、相続税を大幅に抑えることができるのです。

「不動産投資は相続税対策に良い」と言われる理由は、現金よりも不動産の方が相続税評価額が大幅に安いからと覚えておきましょう。

気をつけて!節税目的の不動産投資が失敗する3つのケース

ここで紹介する失敗ケースを知れば、不動産投資で節税する時によくある失敗を防ぐことができます。

節税にだけ目がいって不動産投資をすると、今回紹介するような大損をしてしまいます

以下3つの失敗ケース・体験談を知り同じ失敗をしないようにしましょう。

  1. 赤字前提で予定を組んでしまう
  2. 資産価値が落ちることを想定していない
  3. 相続の際に内輪揉めが起こりやすい

ケース1.赤字前提で予定を組んでしまう

節税を目的としてワンルームマンション投資を始めました。

不動産会社の担当者が赤字にして損益通算をすれば節税できますよ!と強く勧めてくるので、その通りにしました。

確かに、赤字で損益通算をすることで、所得税や住民税が10万円程度も下がりました。

しかし、会計上だけでなく、キャッシュフローも赤字になったため、資金が足りなくなって困っています。

家族からお金を借りてなんとか破産は免れましたが、気を抜けない状態が続いています。

不動産投資では、節税=赤字なので、上手くやらないと手元の現金がなくなることになります

ケース1の解説

このように、節税目的で不動産投資を始めると赤字前提で計画を立てるため、大抵失敗します。

節税をするにしても、キャッシュフローは黒字を確保しなくてはいけません

帳簿上もキャッシュフローも赤字になり、節税以上の損失を負って破産するケースは少なくありませんよ。注意してください。

ケース2.資産価値が落ちることを想定していない

資産価値が落ちることを想定していないのも、よくある失敗ケースです。

物件は、経年劣化や外部環境によって、資産価値が落ちていきます

一部の地域では価値が上がることもありますが、価値が落ちていくのが一般的です。

資産価値が落ちると、売却金額も下がりますし、家賃も安くなってしまいます

収益性や資産性が低くなるため、運用で利益を出すことは難しいです。

節税ばかりを考えて不動産投資を始めると、このような物件を掴むことになります。

収益性や資産性が高い物件を選び、価値が落ちることもシミュレーションし、出口戦略まで描いておくことが大事なのです。

「資産価値がこれほど落ちることを想定しておらず、稼げなくなって節税どころではなくなった」などの体験談も多く見られます。

年間で10万円節税をしても、資産価値が100万円落ちてしまったら、トータルで見るとマイナスです。

節税目的の不動産投資だと、このような失敗を起こすことになるでしょう。

ケース3.相続の際に内輪揉めが起こりやすい

将来の相続税対策として、不動産投資を始める方も多いです。

しかし、「相続の件で内輪揉めが起きており、相続税対策どころではない。不動産ではなく現金で持っていた方が良かったかも…」などの体験談は少なくありません。

相続税対策をしたとしても、被相続人が喜ぶとは限りませんし、不動産を買ったことがきっかけで揉めることもあります。

不動産は分けることが難しいためです。

節税対策で始めた不動産投資が、必ずしも良い相続を生み出すとは限りません。

節税のためなら不動産投資はやめておこう

ここまで「不動産投資の節税効果」について解説してきました。

不動産投資には節税効果がありますが、節税だけを目的とした不動産投資であればやめておいた方が無難です。

結果的に節税額以上の損失を負うことになります。

節税のための不動産投資で損をしていては本末転倒です。

不動産投資を行うなら、まずは不動産投資単独で安定した収益を出すことが重要になります。

収益が出なければ、節税どころではありません。

そのためにも、信頼できる不動産会社を探し、収益性や資産性が高い物件を手に入れることが大事です。

不動産投資に節税効果だけを求めている方は、手を出さないようにしてください。

まとめ

本記事では、不動産投資で節税ができる仕組みや、節税目的の不動産投資が失敗するケースについて紹介いたしました。

以下に大事なポイント3つをまとめています。

  • 不動産投資は損益通算で赤字を他の所得から差し引くことができる
  • 不動産は現金よりも評価額が低いため将来の相続税対策になる
  • 節税目的で不動産投資を始めてもほとんどの場合大きく失敗する

不動産投資を検討している方は、くれぐれも節税だけを目的にしないようにしてくださいね。

ここからは、すでに不動産投資をしている人に向けて、具体的な節税の仕組みやポイントを説明していきます。

不動産投資で収益をあげた上での節税対策として、ぜひ参考にしてみてください。

不動産投資で賢く節税するための3つのポイント

ここで紹介する3つのポイントを知ることで、不動産投資で効果的な節税ができるようになります。

これらのポイントを知らないままだと、必要以上に税金を支払うハメに…

不動産投資で賢く節税するためにも、以下3つのポイントは押さえておいてください。

  1. 認められるものはすべて経費計上する
  2. 「青色申告控除」を活用する
  3. 赤字が出たら「損益通算」する

それぞれのポイントについて、確認していきましょう。

ポイント1.認められるものはすべて経費計上する

不動産投資で賢く節税するための1つのポイントが、認められる費用はすべて経費計上することです。

不動産所得は「家賃収入等−必要経費」で算出をするため、必要経費が多いほど不動産所得を低く抑えることが可能です。

家賃収入が200万円で経費が50万円だと所得は150万円ですが、経費が70万円だと所得は130万円まで下がります。

支払う税金額もそれに伴って下がるため、支出はできる限り経費に含めた方がオトクです。

後に詳しく紹介しますが、必要経費として認められる費用はたくさんあります。

必要経費を、抜けがないようすべて計上することが節税効果を高める最も効率的な方法です。

そのため、支払った費用の領収書や支払証明書は必ず保管しておきましょう。

また、どの費用が経費として計上できるのかを、早い段階で覚えておくようにしてください。

経費計上できる費用については、後ほど詳しく解説していきますね。

ポイント2.「青色申告控除」を活用する

青色申告控除を活用することで、最大65万円の特別控除を受けることができます

課税所得を65万円も少なくできるため、税負担を抑えることが可能です。

確定申告には「白色申告」と「青色申告」2種類がありますが、必ず「青色申告」を使用しましょう。

白色申告だと、特別控除はありません

青色申告であれば、以下のように提出書類も増えるので手間はかかってしまいます。

  • 確定申告書
  • 青色申告決算書
  • 損益計算書
  • 貸借対照表 など

しかし、青色申告であれば以下のように多くのメリットがあります。

  • 最大65万円控除できる
  • 最長3年間純損失の繰り越しができる
  • 家族への給与を全額経費計上できる
  • 貸倒引当金を経費にできる
  • 30万円未満の資産でも一括計上できる

このように、青色申告は節税効果が高い申告方法です。

複式簿記の専門知識がなかったとしても、会計ソフトを使用すれば簡単に作成することができます

不動産投資で賢く節税するためにも、節税効果が高い青色申告を活用しましょう。

※青色申告をするには、3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を提出して、承認を受けなくてはいけません。

ポイント3.赤字が出たら「損益通算」する

不動産投資で賢く節税をするポイントが、赤字が出たら損益通算をすることです。

先に紹介したとおり、損益通算とは赤字を他の黒字所得と相殺できる仕組みになります。

最大限の経費計上や減価償却費によって不動産所得が赤字になった場合は、忘れずに損益通算を行いましょう。

赤字分を他の黒字所得から差し引くことができるため、総所得を少なくでき、所得税や住民税を減らすことができます。

赤字が多く、他の黒字を相殺しても余る場合は、最長3年間繰り越すことも可能です。

赤字になった場合は、損益通算を行い、税負担を抑えましょう。

見逃しやすい「実は経費に計上できるもの」を押さえよう

不動産投資は、経費として計上できる費用がたくさんあります。

節税効果を高めるには、経費を計上して不動産所得を減らすことが重要です。

どのような費用が経費計上できるかを知らないと、最大限節税することができません。

計上できる費用を経費にしていない場合は、必要以上に税金を支払うことになります

不動産投資で経費計上できる費用は、次のとおりです。

  • 固定資産税・都市計画税
  • 不動産取得税・登録免許税・印紙税
  • 減価償却費
  • 管理委託手数料
  • 司法書士報酬
  • 税理士報酬
  • ローン利息(建物の利息のみ。土地の利息は経費NG)
  • 修繕費(原状回復工事など)
  • 管理費
  • 地震保険料・火災保険料
  • 通信費
  • 消耗品費
  • 新聞図書費
  • 接待交際費
  • 広告宣伝費
  • 交通費 など

このように、固定資産税や不動産取得税などの税金も経費として認められています。

また、司法書士や税理士へ支払う手数料、火災保険料や地震保険料も経費として計上が可能です。

入居者が退去した後に実施する原状回復工事の費用や、毎月支払う管理費や管理委託手数料も認められています。

入居者を募集するための広告宣伝費や取引先との外食費なども、計上できる費用です。

尚、接待交際費や新聞図書費、通信費などは、あくまでも不動産投資の運用に使用した分のみ経費計上ができます。

計上できない「NG経費」8選

一方で、経費計上できない費用もあります。

それらを計上してしまうと、加算税等のペナルティを課せられる可能性がありますので、要注意です

以下は、経費として計上できないNG経費8選です。

  • 不動産投資ローンの元金・住宅ローンの元本
  • 資産価値を上げるための修繕費
  • インターネット代や携帯代
  • 仲介手数料
  • 福利厚生費
  • 所得税や住民税
  • 友人との外食代など事業と無関係の支払い
  • 食費や自宅の光熱費など家庭の支払い

このように、実は経費計上できない費用もたくさんあります。

扱いに迷う費用に関しては、税理士や税務署、不動産会社などに確認するようにしましょう。