「アパート経営で経費計上できるのは、どんな費用?」
「経費として認められない費用は何がある?」
など、アパート経営の経費について疑問があり、詳しく知りたいと考えていますね。
経費について詳しく知らないと必要以上に税金を支払うことになり、資金が枯渇する事も。
また、確定申告でペナルティが課せられる可能性もあります。
経費についての正しい理解は、安定したアパート経営をする上で必須です。
そこで本記事では、以下の4点についてわかりやすく紹介しています。
- 見逃しがちなアパート経営で経費扱いされる項目
- アパート経営で経費計上できない項目
- 【3STEPでわかる】減価償却の簡単な計算方法
- アパート経営初心者向けの「経費に関するQ&A」
この記事を読むことで適切に節税ができ、確定申告もスムーズに進みますので参考にしてください。
1.アパート経営では経費を理解しないと「大損」してしまう
アパート経営では、経費を理解していないと「大損する」と断言します。
何が経費になるのか理解していないことは、大家としては致命的。
それほど「経費」はアパート経営をする上で重要な項目なのです。
不動産投資では、家賃収入から経費や控除を差し引いた所得によって支払う税金が変わってきます。
つまり、経費が多ければ多いほど税金は少なくなるのです。
そのため、経費を理解できていないと適切な節税ができず、必要以上の税金を支払うことに…
そうなってしまうと手元に残るお金が少なくなるため、資金繰りに困ってしまいます。
せっかく買った物件を手放し、早期に破産する事も十分に考えられるでしょう。
このように、アパート経営で経費を理解していないことは間違いなく大損につながります。
経費を正しく理解し、適切に計上することで安定したアパート経営を始めていきましょう。
次章以降で
- どんな項目が経費扱いされるのか
- 経費扱いされない項目とは
について詳しく紹介していきます。
損をしたくない方必見の内容ですので、じっくり読み進めることをおすすめします。
2.アパート経営で経費扱いされる項目とは
ここで紹介する内容を知ることで、経費計上のミスによる損失を防ぐことができます。
アパート経営では、仲介手数料や広告宣伝費、損害保険料など、さまざまな経費項目があります。
適切に経費計上するためにも、どのような費用が経費として認められるのか把握しておくことが大事です。
ここでは、アパート経営において経費扱いされる項目を確認していきましょう。
見逃しがち!実は経費扱いしていい項目
「こんな費用も経費として計上できるんだ!」と少し驚く費用もあります。
特に以下3つの費用は見逃しがちなので、丁寧に取り上げますね。
- 飲食代
- 自宅の家賃
- 水道光熱費
経費計上できる費用をできるだけ多く知っておけば、大幅な節税が可能です。
ただし、これらの3費用はすべてが経費計上できるわけではありません。
そのため、「どのようなケースであれば計上できるか」「どんな場合は経費として認められないか」を紹介していきます。
お得な経費1.飲食代
飲食代は、アパート経営の経費として認められるケースが多いです。
たとえば、アパート経営関係者との打ち合わせや接待の飲食代など。
これらは「交際費」として計上できます。
特に管理会社や不動産会社など、アパート経営に関わる人と業務上必要性がある飲食をした場合が該当します。
アパート経営をしているからといって、すべての飲食代が交際費として経費計上できるわけではありません。
以下のような飲食代は、アパート経営の経費として計上できないことも覚えておきましょう。
- 1人での飲食代
- アパート経営に関係ない人との飲食代
このように飲食代をアパート経営の経費として計上できますが、関係者との打ち合わせや接待の場合に限ります。
しかし、1人で食事をしていた場合でも「リモートワークで電話会議をしていた」ケースであれば計上しても問題はありません。
あくまでも「業務上必要かどうか」を基準に考えます。
お得な経費2.自宅の家賃
自宅の家賃をアパート経営の経費として計上することは可能です。
自宅を事務所として使用している場合は、地代家賃として費用計上できます。
ただし、自宅の家賃すべてを経費にできるわけではありません。
あくまでも、自宅のうち事務所として使っている部分のみです。
たとえば、自宅が70㎡で事務所として使用しているのが20㎡であれば、家賃の約28%を経費として計上ができます。
自宅の家賃が10万円であれば、約2万8,000円が地代家賃としての経費です。
このように、使用面積等によって経費を算出することを按分といいます。
算出の基準は使用面積の他にも、使用している時間もよく使われます。
ですが、事務所として使用している割合より多く経費計上した場合や、「家賃の3分の2」など明らかに不自然な場合は経費として認められません。
実際に事務所として使用し、適切に按分されていれば、自宅の家賃もアパート経営の経費として計上できます。
計算に不安がある場合は、税務署に相談をしましょう。
お得な経費3.水道光熱費
アパート経営の経費として、水道光熱費も計上ができます。
ただし、経費計上できるのは、あくまでも共用部分の水道光熱費です。
室内(専用部分)の水道光熱費は入居者が負担しますので、オーナーが経費として計上することはできません。
外部廊下の照明、エントランスの照明、外部に設置した水道など、オーナーが負担する共用部分の水道光熱費が対象です。
そのため、毎月送られてくる水道光熱費の請求書や領収書は、大切に保管しておきましょう。
月に4,000円使用していたら、年間で約5万円の経費計上が可能です。
主な経費扱いされる項目
ここでは、アパート経営で経費扱いされる項目について確認しましょう。
以下は、アパート経営の不動産所得で経費になる19の項目です。
- 固定資産税・都市計画税
- 損害保険料
- 修繕費
- 水道光熱費
- 管理委託手数料
- 広告宣伝費
- 仲介手数料
- 給与(従業員がいる場合)
- 青色専従者給与(専従者がいる場合)
- 通信費
- 接待交際費
- 新聞図書費
- 旅費交通費
- 地代家賃
- 消耗品費
- ローン保証料
- 借入金利子
- 減価償却費
- 解体費・立退料
地代家賃や接待交際費、新聞図書費、通信費、消耗品費、旅費交通費などは、プライベートと混同しやすい費用でもあるため注意してください。
このように、アパート経営では非常に多くの経費項目があることを覚えておきましょう。
必ずしも全て完璧に覚える必要はありません。
ブックマーク機能を使い、このページをいつでも参考にできるようにしておけばお手軽です。
3.すぐわかる!経費計上できない項目に共通する3つのルール
アパート経営で経費として認められる項目だけでなく、経費計上できない項目についても理解しておく必要があります。
また、追徴課税などのペナルティが課せられることも防げます。
経費計上できない項目とは「3つの経費計上項目のルールを満たしていないもの」です。
- 業務に直接関連するものである
- 業務遂行上、必要性がある
- 業務用の金額を明確に区別できる
これらのルールを満たしていない費用については、経費として計上することはできません。
たとえば、以下のような費用です。
- 友人との飲食代
- プライベートの家族旅行代
- 自宅兼事務所の家賃全額
- 自宅兼事務所の水道光熱費全額
- 家族のスマホ代
など、他にもさまざまな費用があります。
水道光熱費や地代家賃、通信費など、アパート経営に使っている分とプライベート分がある場合は、按分することで経費計上が可能です。
アパート経営業務に直接関連し、必要性があり、金額を明確に区別できるものは必要経費として認められます。
しかし、業務との関連や必要性がなく、明確に区別できないような費用は経費としては認められません。
確定申告の際、どうしても判断に迷う費用がある場合は、税務署に問い合わせをしましょう。
4.アパート経営の「所得」=「不動産収入」-「必要経費」
アパート経営で得る所得は、不動産所得であり、家賃収入(不動産収入)から必要経費を差し引くことで算出ができます。
- 不動産所得=不動産収入(家賃収入)−経費
不動産所得は、他の所得と合算した金額に税金が課せられる、総合課税です。
不動産所得と給与所得などを合算した課税所得に対して、所得税や住民税がかかります。
そのため、不動産所得が少ない方が、かかる税負担は小さいです。
節税のために、不動産所得を少なくするには、以下2つの方法があります。
- 家賃収入を少なくする
- 必要経費を多くする
しかし、節税とはいえ、家賃収入を少なくする方法は、資金繰りが悪化するため現実的ではありません。
節税に効果的なのは、必要経費を可能な限り計上することです。
少しでも所得税や住民税を抑えるためにも、経費は必ず覚えておいてください。
必要経費の項目をざっくり覚えておこう
先に紹介したとおり、アパート経営の必要経費は20種類程度です。
多い上に覚えづらいので、必ずしも完璧に覚える必要はありません。
「どういった経費項目があるか」だけ記憶にとどめておきましょう。
不安になったときや、確定申告のときに、この記事を確認すれば問題ありません。
また、減価償却があることも忘れないようにしてください。
仮に、4,400万円の新築木造アパートを22年で減価償却すれば、毎年200万円の経費計上です。
減価償却で固定資産を長期的に経費計上することは、大きな節税につながり、税負担を軽減できます。
次の章では、アパート経営で節税をするために欠かせない減価償却について詳しく説明していきます。
難しく思われがちですが、誰でも簡単に減価償却できる方法を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
5.3STEPでわかる減価償却の簡単なやり方(定額法)
ここで紹介する3STEPで、減価償却(定額法)のやり方を把握することができます。
定額法とは、耐用年数期間で毎回一定額を減価償却する方法のことです。
減価償却には「定額法」と「定率法」があります。
ですが、基本的に「定額法」だけ覚えておけば問題ありません。
不動産は定額法がベースとなっているからです。
さらに、定額法による減価償却費は仕組みや考えがシンプルなため、決して難しくありません。
以下の3STEP通りに進めれば、減価償却が誰でも簡単にできます。
- 所有する物件の耐用年数を調べる
- 所有する物件の取得価額を確認する
- 「取得価額×償却率」の公式に当てはめる
それぞれのSTEPについて、見ていきましょう。
STEP1.所有する物件の耐用年数を調べる
まずは、所有するアパートの耐用年数を調べましょう。
不動産の耐用年数は、以下のように、用途と構造によって異なります。
木造 | 軽量鉄骨プレハブ造 (骨格材肉厚3mm超4mm以下) | 重量鉄骨造 (骨格材肉厚4mm超) | 鉄筋コンクリート造/鉄骨鉄筋コンクリート造 | |
---|---|---|---|---|
住宅用 | 22年 | 27年 | 34年 | 47年 |
店舗用 | 22年 | 27年 | 34年 | 39年 |
事務所用 | 24年 | 30年 | 38年 | 50年 |
飲食用 | 20年 | 25年 | 31年 | 34年〜41年 |
アパート経営は住宅用となるため、木造であれば22年、軽量鉄骨プレハブ造は27年、重量鉄骨造は34年です。
上記の耐用年数は、あくまでも新築の場合になります。
中古のアパートを購入した場合は、以下の計算式で耐用年数を算出可能です。
- 中古の耐用年数=耐用年数×20%
たとえば、中古の木造アパートの築年数が25年の場合、「耐用年数22年×20%」で4年と算出ができます。
また、築年数が耐用年数を超えていない中古物件の場合は、「(耐用年数−経過年数)+経過年数×20%」の計算式です。
築年数10年の中古木造アパートであれば、「(耐用年数22年−経過年数10年)+経過年数10年×20%)」で14年になります。
このように、新築もしくは中古で購入するアパートの耐用年数を確認しましょう。
STEP2.所有する物件の取得価額を確認する
アパートの耐用年数を調べた後は、物件の取得価額を確認しましょう。
取得価額は、売買契約書や情報サイト、不動産会社への問い合わせ等で知ることができます。
耐用年数だけを確認しても、取得価額がわからなければ減価償却ができません。
ちなみに、取得価額には不動産取得税などは含まれないようになっています。
STEP3.「取得価額×償却率」の公式に当てはめる
定額法の計算式は「取得価額×償却率」です。
償却率については、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に記載されています。
ただし、取得原価÷耐用年数をすれば、ほぼ償却率に近い数値です。
ちなみに耐用年数22年の場合は、償却率は0.046%になります。
このように、STEP1〜STEP3の手順で減価償却費を導き出すことが可能です。
6.【初心者向け】アパート経営初年度の必要経費
ここでは、アパート経営初年度にかかる主な必要経費を把握できます。
初年度ならではの経費となるため、事前に知っておくことで、節税や資金計画の精度を高めることが可能です。
以下は、アパート経営初年度にかかる5つの経費になります。
- 旧アパートの取り壊し費用
- 旧アパートの立ち退き費用
- 土地と建物の不動産取得税
- 土地と建物の登録免許税
- 印紙税
それぞれの費用について、見ていきましょう。
必要経費その1.旧アパートの取り壊し費用
既存のアパートを取り壊して、新しいアパートを建てる場合は、取り壊し費用がかかります。
取り壊し費用は、アパートの規模や解体業者によって大きく変わるものです。
既に完成している新築アパートや建て替えが必要ない中古物件の場合は、取り壊し費用はかかりません。
建て替えを行う場合は、取り壊し費用を経費計上できることを覚えておきましょう。
必要経費その2.旧アパートの立ち退き費用
アパートを取り壊しする場合は、入居者に立ち退き料を支払う必要が出てきます。
立ち退き料についても、取り壊し料同様、基本的にはアパート経営初年度ならではの費用です。
立ち退き料を支払うことになった場合は、経費として計上することを忘れないようにしてください。
建て替えを必要としない場合は、初年度に立ち退き料を支払うことはありません。
必要経費その3.土地と建物の不動産取得税
土地と建物の不動産取得税も、アパート経営初年度の必要経費です。
不動産取得税とは、不動産を購入する際に1度だけかかる税金になります。
「課税標準額×税率」で算出でき、納付先は都道府県の地方税です。
具体的な税額の計算方法は、次のようになります。
- 不動産取得税=建物評価額(固定資産税評価額)×税率4%(標準税率)※住宅用は3%
不動産取得税についても、必要経費として計上が認められています。
不動産取得税は、固定資産税の毎年かかる税金ではなく、アパート経営初年度特有の税金です。
必要経費その4.土地と建物の登録免許税
アパート経営初年度には、登録免許税もかかります。
登録免許税とは、不動産の登記にかかる税金のことです。
新築物件を購入・建築する際は所有権の保存登記、中古物件を購入する際は所有権の移転登記を行います。
また、お金を借りる際は抵当権の設定登記が必要です。
所有権の保存登記と抵当権の設定登記は「課税標準額×0.4%」、所有権の移転登記は「課税標準額×2.0%」で算出ができます。
アパート経営初年度は、不動産取得税に加えて登録免許税もかかり、どちらも経費計上できることを覚えておきましょう。
必要経費その5.印紙税
アパート経営初年度の必要経費には、印紙税もあります。
印紙税とは、契約者に貼る印紙代のことです。
税額は、以下のように契約金額で異なります。
1万円未満 | 非課税 |
---|---|
10万円以下 | 200円 |
50万円以下 | 200円 |
100万円以下 | 500円 |
500万円以下 | 1,000円 |
1,000万円以下 | 5,000円 |
5,000万円以下 | 1万円 |
1億円以下 | 3万円 |
5億円以下 | 6万円 |
※不動産売買契約書の場合
印紙税は、売買契約書だけでなく、工事請負契約書や金銭消費貸借契約書にもかかります。
7.アパート経営初心者が気になる!経費に関するQ&A
ここで紹介するQ&Aを見れば、アパート経営の経費に関する疑問を解消できるでしょう。
また、経費についての考えも整理できるはずです。
ここでは、4つのQ&Aについて紹介しています。
- 一人で食べた食事でも経費扱いできる?
- 知人が洋服代を経費にしてたんだけどみんなOKなの?
- 税理士にいくつかは経費扱いされないって言われた…
- 確定申告で「白色申告」か「青色申告」どっちがいいの?
いずれも、アパート経営初心者の方が疑問に感じやすい内容です。
1つずつ、確認していきましょう。
Q1.1人で食べた食事でも経費扱いできる?
1人での食事代は、基本的に経費扱いできません。
食事代を経費扱いできるのは、アパート経営関係者との打ち合わせや接待による飲食代です。
ただし、1人での食事代がすべて経費扱いできないわけではありません。
業務関係者とのテレビ電話や通話による打ち合わせであれば、1人での食事代も経費計上が可能です。
事務所近くの飲食店での食事代は比較的通りやすいですが、あまりに回数が多いと指摘が入ったり、認められない恐れがあります。
1人での飲食は、仕事とプライベートの明確な線引きが難しいです。
そのため、テレビ電話や通話で打ち合わせをした場合は、証拠となるよう記録を残しておきましょう。
Q2.知人が洋服代を経費にしてたんだけどみんなOKなの?
洋服代の経費計上については職業によって異なります。
たとえば、芸能人や有名人などは、テレビ出演や講演時のための洋服を衣装代として経費計上することが可能です。
しかし、基本的なアパート経営においては、業務用に衣装を揃える必要がないため、洋服代を経費計上することはできません。
Q3.税理士にいくつかは経費扱いされないって言われた…
税理士によっても経費に対する考え方が異なります。
特に、プライベートと仕事の線引きがグレーな費用項目です。
税理士によって必要経費とする場合もあれば、経費として認めないケースがあります。
税理士を雇っている場合は、その税理士に従うしかありませんが、雇っていない場合は税務署に問い合わせをしましょう。
Q4.確定申告で「白色申告」か「青色申告」どっちがいいの?
おすすめなのは青色申告です。
白色申告は控除がありませんが、青色申告であれば最大65万円の控除を受けられます。
確定申告書類が増え、複式簿記(65万円の場合)になり、多少手間はかかりますが、65万円控除は大きいです。
また、赤字の繰り越しや家族への給与が経費にできるなどのメリットもあります。
会計ソフトと使用すれば、簿記の専門知識がなくても、青色申告で確定申告をすることは可能です。
節税の観点から考えれば、青色申告一択と言えるでしょう。
※青色申告を希望する場合は、事前に「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。
まとめ
今回は、アパート経営で経費扱いされる項目や経費計上できない項目、減価償却方法などについて紹介しました。
あらためて最後に大事なポイントを紹介すると、以下の3点です。
- 業務に関係や必要性があり、仕事とプライベートを明確に分けられる項目は経費計上できる
- 認められない経費を計上すると追徴課税などのペナルティが課せられる恐れがある
- 正しく節税をすることが安定したアパート経営につながる
これからアパート経営を考えている方や始めたばかりの方は、ここで紹介した内容を参考にして、安定経営を目指しましょう。
経費について迷うようなことがあれば、専門家や税務署に問い合わせすることをおすすめします。