「夢の印税生活」に憧れを持った経験1度くらいはあるかと思いますが、本や楽曲が売れたときの印税の割合はどの程度なのでしょうか。
「ベストセラー作家なら印税生活を送れるのでは?」と思うかもしれません。
この記事では、
- 印税の仕組み
- 音楽に関する印税の種類
- 本の印税の割合や計算方法
- 本の印税の2つの支払い方法
- 電子書籍の印税の仕組み
について徹底解説いたします。
印税のことが丸わかりできる内容となっていますので、「今後音楽や作家デビューしてみたい」という方もぜひ参考にしてください。
印税の意味とは?収入になる仕組み
印税とは主に、販売会社が創作者に支払うもの。
本を執筆した著者は「著作権」を、販売会社は「版権」を持つのが一般的な仕組みです。
なお、不動産売買契約書などに貼るのは「印紙」です。
領収書に貼り付けて税金を納めるものですが、印税も「著作権使用料」を「著作検印紙」に引き換え書籍に貼り付けて販売していました。
この経緯から印紙税に似せて、「印税」と呼ぶようになったと言われています。
音楽に関わる印税の3つの種類
音楽著作権といっても3つの種類に分かれ、それぞれ収入の割合が変わります。
たった1曲でもミリオンセラーになれば印税生活が送れると噂も高く、歌い手よりも作詞作曲をする側に印税収入が入ることはすでにご存知かと思います。
近年では、CDよりも配信サービスの利用者が急増したため音楽不況とも言われていますが、音楽業界で生計を立てる人はどのような収入を得ているのでしょうか。
音楽に関わる印税はこの3つ。
- 著作権印税
- 原盤印税
- アーティスト印税
この3つの印税について詳しく解説していきます。
種類1.著作権印税
音楽に関する印税の中で最も大きな収入になるのが「著作権印税」です。
レコード会社はJASRACに定価の6%に当たる「著作権使用料」を支払い、残りの94%を音楽出版社や作詞作曲家に分配します。
新人の場合は約50%が音楽出版社の取り分となり、作詞作曲家それぞれ25%を分けるのがおおよその流れです。
もし作詞作曲をひとりで手掛けた場合は2人分の印税が入り、もちろん歌うこともひとりで行えば全て自分の収入になります。
著作権印税が発生する場面は身近なところにたくさんあり、カラオケやパチンコ店で楽曲を使用した場合も含まれます。
カラオケで1曲歌われた場合の印税は、およそ2~7円が相場なので、もし日本中で1日1000回歌われた場合は2,000~7,000円/日入る計算になります。
著作権使用料の主な利用者は以下の通りです。
- レコード会社
- テレビ局
- ラジオ局
- コンサート主催者
- カラオケ事業者など
最近では、教育現場で利用する場合でも著作権の手続きが必要となったので注意しなければなりません。
種類2.原盤印税
原盤印税は、CDなどの売り上げに応じて発生する印税のことです。
この場合は、作詞作曲家ではなくマスターテープを製作したレコード会社や原盤製作会社におよそ定価の10%が支払われると言われていますが、人気アーティストの場合は16%程度まで上がることもあります。
印税率10%なら、3,000円のCDが売れると1枚300円の収入が入る計算です。
100枚売れてもようやく30,000円程度なので、製作側はCD1枚にかける費用が赤字にならないよう必死にプロモーションを行う必要があるという訳です。
種類3.アーティスト印税
アーティスト印税は別名「歌唱印税」とも呼ばれ、CDなどの売り上げに応じて1%程度が歌い手や演奏者に支払われる印税です。
1,000円のCDが1枚売れるごとに10円と少ないようですが、100万枚売り上げがあれば1千万円と大きな金額となるため人気が大きく左右していると言えます。
このアーティスト印税は、ソロとグループどちらも同じ扱いになるため、ソロアーティストの方が収入面では有利だと言えるでしょう。
本が売れた時の印税の割合の計算方法
それでは本が売れた時の印税はいくらなのでしょうか?
芸能人が書いた本が大ヒットするたびに印税額が予想されますですが、私たちも本を書いて売れば印税生活ができるチャンスがあるのか知りたいですよね。
まずは本の印税が入る仕組みについて以下の内容を解説していきます。
- 印税の割合
- 印税の計算方法
- 本の印税の種類
発行部数が多ければ単純に増えるものなのか、それとも売り上げ部数によって変わるのか。
ベストセラー作家の方が印税の割合が大きいのか?など、本の印税について見ていきましょう。
(1)印税の割合
本の印税は、定価(税抜)に対して8~10%が相場です。
最大10%ということなので、契約内容によって収入の差が開きます。
初版は8%、二刷以降は10%になるため「増刷決定」と発表される人気著書の方が印税は増える傾向です。
①大物作家の場合
印税は最大10%なので、ベストセラー作家であっても10%は変わりません。
過去には印税率12%~で契約した作家がいたという噂もありますが、一般的には大物作家でも10%を超えることはほぼありません。
もし1,000円の本が10万部売れると約1千万円もの印税が入り、その後も増刷が続けばそれ以上の収入が入ることになります。
②新人や売れない作家の場合
新人作家や売れない作家になると印税率も下がることが多く、大物作家の半分である5%の印税率になる場合もあります。
出版社といくらの印税率で契約するかで大きく左右されますが、最近は出版物の売り上げが大幅に下がっているためかなり厳しいと言えるでしょう。
③翻訳本の場合
ちょっと分かりにくいのが翻訳本の場合です。
英文の小説を翻訳されて日本で販売されたとき、原作者と翻訳者の2人が名前を連ねることになります。
翻訳書の印税率は8~10%で契約されることが多く、1冊に対して支払われるため印税を原作者と翻訳者で分ける方法が用いられます。
印税を分ける割合は「原作者6:翻訳者4」で分けることが多いですが、どうしても翻訳者は取り分が少ないため、翻訳家として仕事を続ける人が少なくなってしまうのが現状です。
④ゴーストライターの場合
有名人のインタビューを書き起こしたり、よくあるビジネス書はほぼゴーストライターが書いています。
一般的なゴーストライターの印税率は明らかにされていませんが、著者の取り分が7%ならゴーストライターは3%あたりが相場です。
もし著者が有名人であり親しい関係であった場合は、収入アップが期待できるかもしれません。
(2)印税の計算方法
印税の計算は、「本の販売価格×冊数×印税率」です。
印税率8%で契約し、販売価格1,000円(税抜)の本を1,000冊発行した場合は、「1,000円×1,000冊×8%=80,000円」となるので8万円の印税が手に入ることがわかります。
冊数については、売り上げ冊数で計算することもあれば、契約条件によっては発行部数の場合もあるので後ほど詳しく解説いたします。
(3)本の印税の種類
ここでお伝えしたいのが、本の印税には発行印税と売上印税の2種類が存在することです。
出版社とどちらの種類で契約したかによって、受け取る収入にも差が出ます。
①発行印税
発行印税とは、発行部数全てに対して支払われる印税です。
「1000冊発行します」、といった場合は1000冊分の印税を受け取ることができるため、売り上げ部数を気にする必要がありません。
②売上印税
売上印税とは、実際に売れた冊数に対して支払われる印税です。
2000年ごろからは、出版業界の不況に伴いこの売上印税が主流となっています。
本が大ヒットすれば著者にも多くの印税が入りますが、売れ行きが悪ければ自動的に収入が下がってしまうため、著者としては不安な契約条件と言えます。
本の印税は2つの支払い方法がある
本の印税の仕組み自体はシンプルなのですが、お金を受け取る際には実売方式と発行部数方式2つの支払い方法から選択することになるため、やや戸惑うかもしれません。
多くの場合は出版社が有利になる「実売方式」が取られますが、印税の知識として2つの方法を押さえておきましょう。
- 方法1.実売方式
- 方法2.発行部数方式
方法1.実売方式
ほとんどのケースで取られるのが「実売方式」です。
実売方式とは、実際に売れた冊数に対して印税が支払われる方法なので、売り上げ部数が伸びれば伸びるほど著者に入る収入は増えていきます。
方法2.発行部数方式
一方で「発行部数方式」になると、発行した冊数に対して印税が受け取れるため、売り上げに左右されることはありません。
こちらの方が著者にとっては安定していますが、出版物の売れ行きが落ちている今は実売方式を取ることが多いとされています。
最大70%!電子書籍の印税率の仕組み
紙の本の印税についてお話ししましたが、電子書籍の印税の仕組みは全く別物になってきます。
結論から言えば、本よりも電子書籍の印税率が全体的に高く、最大70%の印税を受け取ることが可能です。
本のように出版しない電子書籍の場合は、「売上印税」の形で印税が支払われています。
売り出し方が紙の書籍とは全く異なり、小さな収入がいくつも発生したり、契約条件が個性的なのが電子書籍業界の現状です。
今後「電子書籍を出版してみたい」という方のためにも、電子書籍の印税の仕組みと最大70%もの印税を受け取る方法について解説していきます。
(1)電子書籍ストアの種類
数え切れないほど増えている電子書籍ストアには、大きく分けて4つの種類があります。
- kindleやkoboのような書籍販売
- 一話ごとに課金する配信サービス
- kindle Unlimitedのような月額定額制サービス
- 無料配信サービス
kindleやkoboのような書籍販売であれば、紙の本と同じ仕組みで印税が支払われます。
それ以外のサービスについては、収入の仕組みがバラバラです。
紙の書籍よりも単価が安い分、細かい収入が積み重なっていくイメージを持った方がいいでしょう。
(2)電子書籍の印税
kindleで電子書籍が売れたときの印税率は35%、koboは20%ですので、紙の本よりも割が良いです。
この他のサービスの印税や作家への報酬については、かなりバラつきが見られます。
たとえば「Rentaコミックス」では、契約作家には「原稿料+印税+年額100万円を支給」と提示していることで話題になりました。
月額定額制kindle Unlimitedは1ページ読まれると0.5円の収入になるので、ページ数が多い方が有利になります。
印税率を公表している会社は少なく、当然ながら連載の更新率が高い作家の方が報酬が上がると言えるでしょう。
(3)70%の印税を得る方法
先ほどAmazon kindleの印税率は35%だとお伝えしましたが、kindle独占販売にすると70%という大きな印税率に上げることができます。
35%ではなく70%の印税を得るにはいくつかの要件を満たす必要があるので、以下にまとめてみました。
- KDPセレクトに登録されている
- 1MBのダウンロードごとに1円の配信コストが差し引かれる
- 希望小売価格は250円~最大1,250円の間に設定する
Amazonの「KDPセレクション」へ無料登録をすると、kindle Unlimitedとkindleオーナーライブラリーに追加され、それぞれのサービスで配信が開始されます。
また、1部ダウンロードされるごとに1円の配信コストが70%から差し引かれるので、希望小売価格が300円なら1冊あたりの収入は次の通りです。
0.7%×(300円-1円)=約209円
300円の電子書籍を販売すると、1冊につき約209円が著者の収入になるイメージです。
単価が安いですが、配信される機会が多いほど読まれることが期待されるので、人気ランキング上位に入った作家は月100万円以上の収入があると言われています。
ただしAmazon kindleで独占販売をすることが登録の条件となるため、70%という高い印税率の分他のサービスで販売できなくなるデメリットも持ち合わせています。
それでも、作家デビューをしてみたい人にとっては挑戦しやすく夢がある環境ではないでしょうか。
まとめ
音楽や本に関わる印税には種類があり、著作権を持つ側が有利になる契約を結ぶことはなかなか難しい状況であることがお伝えできたかと思います。
夢の印税生活を送ることは、たとえベストセラー作家であっても厳しい事情がありました。
しかし、発展が目覚ましい電子書籍業界はうまくいけば高い収入が狙えます。
「本を出版してみたい」と考えている人は、チャレンジしやすい環境を探して作家デビューしてみてはいかがでしょうか。